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ラブスタイルについての覚え書き:なぜその3つが原型なのか?

先日,とある機会があってリー(Lee, J. A.)のラブスタイルについて調べていました。

恋愛の心理学に興味がある人はご存知かもしれませんが,リーのラブスタイルとは,恋愛の形には基本の3つとその混合があり(よく見られる混合型は3つ),それらは円環構造になりますよ,という理論です。日本では,恋愛の色彩理論として有名だったりします。

円環構造のイメージ図は以下で確認できます。

恋愛の色彩理論という名前から推測されるように,リーは,色相にヒントを得て恋愛の形を分類しました。色には原色と,それらの混合色があるように,恋愛の形にも原色に相当するもの(とりあえず,原型と呼ぶ)と,その混合(混合型と呼ぶ)があるとリーは考えました。

リーが恋愛の形の原型として考えたラブスタイルが,エロス,ルダス,ストーゲイで,混合型(の一部)として,マニア,アガペ,プラグマがあり,この6種類がよくみられる恋愛の形だとリーは述べています。

6つのラブスタイル

6つのラブスタイルの詳細はWikipediaで確認していただくとして,それぞれの簡単な紹介は以下です。

エロス=美への愛
恋人の外見に強烈な反応を引き起こす恋愛
例)『シンデレラ』,『ロミオとジュリエット』

ルダス=遊びの愛
恋愛をゲームと捉え,楽しむことを大切に考える恋愛
例)『NANA』のタクミ,『007』シリーズのジェームズボンド

ストーゲイ=友愛的な愛
穏やかな,友情的な恋愛
例)『赤毛のアン』のアンとギルバート,『源氏物語』の夕霧と雲居雁

マニア=狂気的な愛
激しい感情をもつことを特徴とする
例)『赤と黒』のジュリアンソレル,中島みゆきの歌すべて

アガペ=愛他的な愛
相手の利益だけを考え,相手のために自分自身を犠牲にすることもいとわない愛
例)『春琴抄』の佐助から琴への愛,『世界の中心で愛を叫ぶ』の主人公

プラグマ=実利的な愛
恋愛を地位の上昇などの恋愛以外の目的を達成するための手段と考えている恋愛
例)夏目漱石『坊ちゃん』の赤シャツ,『風と共に去りぬ』のスカーレットオハラ

ちなみに,これらの説明は,『恋ごころの科学』から引用しています。

ラブスタイルの原型の原型たる理由がわからない

リーは色相に着想を得たので,恋愛の原型を3つにし,そこから混合型を考えるという発想に至ったのだと思います。だから,恋愛の原型はなぜ3つなの?と問われたら,色(三原色)に着想を得たからと回答することができます。

しかし,ラブスタイルについて連れ合いに説明している際に,「なぜ原型は3つなの?」ではなく,「なぜエロス,ルダス,ストーゲイが原型で,マニア,アガペ,プラグマが混合型なの?」と問われました。ハッとさせられました。今まで考えたことがなかった問いでした。要するに,マニア,アガペ,プラグマが原型で,エロス,ルダス,ストーゲイが混合型にならなかったのはなぜか?ということです。確かに,マニア,アガペ,プラグマが原型でも良いように思います。特に,アガペはキリスト教的な愛の形であることを踏まえると,アガペが原型でもよかったような気もしてきます。

そこでまず,リーが着想を得た色の三原色について簡単に調べてみました。すると,三原色は加法混色か減法混色かで異なることがわかりました。どういうことかというと,加法混色の場合,色の三原色は赤,緑,青になります。これは光の三原色とも言われます。他方,減法混色の場合の色の三原色はイエロー(黄),マゼンタ,シアンになります。これは色材の三原色とも言われます。

ちなみに,加法混色の場合の二次色(原色を混合した色)は,黄(イエロー),マゼンタ,シアン,減法混色の場合の二次色は,赤,緑,青です。すなわち,加法混色における原色は減法混色における二次色になり,減法混色における原色は加法混色における二次色になります。要するに,ある前提のときに原色であったものが,別の前提をおけば二次色になるということです。

ということは,色に着想を得たラブスタイルにおいても,エロス,ルダス,ストーゲイが原型になるのはある前提のときであり,別の前提を置けば,マニア,アガペ,プラグマが原型になるのかもしれません。リーは1974年の論文The styles of lovingで「色には3つの原色ー赤,黄色,青ーがある」(p.44)と述べており,色材の三原色的な前提を置いていると読み取れます。

では恋愛の形におけるこの前提は何なのか?というのが問いになるわけですが,私はリーの論文しか読んだことがなく,リーの書籍は読んだことがありません(リーの書籍はかなり稀少本)。

【読んだ文献】
Lee, J. A. (1974). The styles of loving. Psychology Today, October, 44-51.
Lee, J. A. (1977). A typology of styles of loving. Personality and Social Psychology Bulletin, 3, 173-182.

もしかしたらリーの書籍の方にこの前提について詳述されているのかもしれませんが,なにぶん本が入手できず,この前提を探れません。でも,気になっています。

もし,マニア,アガペ,プラグマが原型で,エロス,ルダス,ストーゲイが混合型にならなかったのはなぜか?(エロス,ルダス,ストーゲイが原型で,マニア,アガペ,プラグマが混合型になったのはなぜか?)についてご存知の方がいらっしゃいましたら,ぜひ教えてください。

あるいは,Leeの書籍『Colours of Love』『Lovestyles』をお持ちの方がいらっしゃいましたら,当該書籍を拝読させていただけますと幸いです。

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仲嶺真
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