信州上田の無言館に行ってきた
ゴールデンウィーク中は浅間山麓にある実家の別荘(と言うと聞こえはいいですがほぼ山小屋です)に滞在していたんですが、その最中に、ローカル線のプチ旅で別所温泉と上田の無言館に行ってきました。
別所温泉は温泉目当てではなくて、母が小学生時代に学童疎開で滞在していた町で、お世話になった旅館に挨拶に行きたいというのでお付き合い。
信濃追分からしなの鉄道で上田まで行き、そこから別所温泉線に乗り換えです。
なんかラップ電車だった。ワンマン運転で、途中の無人駅ではドアが一つしか開きません。バスみたい。
上田を出てすぐに素敵な赤いトラス橋を渡るんですけど、運転席側にガチの撮り鉄が陣取っててチキンな私はかぶりつきの位置では見られなかった…無念。
駅は大正ロマン風というか、少し昔の洋風の作りで可愛いです。祝日だからか手作り品の小さなマルシェをやってました。
事前に調べといた観光地図では随分距離があるように見えたけど実際には10分程度で目的の宿へ。大湯のすぐ近くのつるや旅館さん。
朝のお客さんが出た清掃中にお邪魔してしまったのですが、疎開当時に母が寝泊まりしていた広間や先生の部屋があった客間などを見せていただき、当時の話も少し聞かせていただきました。
母は過去に一度もそんな話はしてなかったけど、疎開中に隣の宿に泊まっていた別の学校の二年生の女の子が、食中毒で亡くなったのだそうだ。親元離れて疎開して、10歳にもならない女の子がおから食べて死んでしまったのだ。それは母だったかも知れないわけで。戦地に出かけて行くだけが戦争ではないのだ、ということを改めて思う。
面会に来たお母さんたちを駅まで迎えに行ったんだけど、石蹴り遊びに夢中になってすれ違ってしまった話だとか、普段聞かない思い出話をついでに聞くことができたので、私にとってもよかったです。
私は姉妹の中で年の離れた末っ子なので、同級生の親は戦後生まれという人が多い。学童疎開程度であっても戦争経験のある人から直接話が聞けるのは貴重なのだ。
宿を出てから、一応ここらのメインストリートって感じの北向観音へ。なんでも善光寺とセットでお参りするとご利益が倍だかなんだかになるらしいですが今回はこちらだけ。
これなんなのかなぁー。女性の名前でたくさん奉納されてたんだけど。
さて、山菜の天ぷらと蕎麦で腹ごしらえしてからシャトルバスで、無言館へ向かいました。
バスの本数はこれぐらい。200円なのでタクシー乗るよりずっと安いです。
バス停から5分ぐらいかな、木陰の道を歩いていくと無言館です。クルマならすぐ近くまで来られますが、アプローチは歩いていきます。
木漏れ日が綺麗。
無言館は、戦争で亡くなった無名の画学生たちの遺した作品や遺品を収集・保存・展示する施設。建物も展示内容も素晴らしいです。現在第2展示室まであり、今後は戦争で亡くなった海外の画家たちの作品も展示していく計画だとか。
教会のような外観。入るとすぐ展示室で、チケット代は展示室を出るときに支払います。
出征前日まで恋人をモデルに絵を描き続け、戻ったら続きを描くからね、と言い残して還らぬ人になった青年画家、身寄りがなく、戦病死した病院の院長に託した一枚の絵だけが生きた証になった若者、戦地の弟に絵の具を送り続けた家族、死を覚悟して身の回りの品を全て知人に分けてしまい、自身の頭部の粘土像を「これだけが自分だから」と家族に言って出征していった青年、憧れの画学校に入学してわずか半年で学徒出陣で戦地に送られた若者。その多くが結婚どころか恋も知らずに異国で亡くなっている。
展示には、わかる範囲で享年と死に場所が記されているんだけど、半数以上が南方だったと思う。つまり、戦死戦死と書かれているが、大半が餓死したということだ。食べたいもののリストを書き付けた遺品のノートに胸がつまる。
遺族が提供した遺品には、戦死兵の家族に贈られた金色の菊の御紋の入ったタバコも展示されていた。私が亡くなった若者の親兄弟や恋人だったら、何も貰わないよりもっと傷ついて怒り狂うな、と思った。大切な人が2度と戻って来ないことの埋め合わせが、タバコ3本て。
美術館の外には休憩できるスペースもあります。
遺族の証言集。第1展示室の出口付近のライブラリースペースでは、このインタビューの録音を聞くこともできる。証言者である家族も高齢化していく中、時間と闘いながら収集されたインタビューだそうです。
こちらは第2展示室。展示品が増えて新たに建設したそうです。図書館スペースや絵本のある日当たりのよいカフェもあって、ゆったり過ごせます。
はちみつレモンソーダ。リゾットなどの軽食もありました。
帰りのバスを待ちながら。高台にあるので眺めがよく、お弁当持ってピクニックでもいい感じです。ブランコなどの子供の遊具もある。
2館をじっくりみるなら休憩込みで2〜3時間は欲しいかな。小学校の高学年ぐらいからなら内容もしっかり理解できると思います。展示室では騒がず静かに過ごすように注意書きがありますが、まともに見てたら言われなくても無言にならざるを得ないと思う。
今後は日本人の作品だけでなく、海外の戦没画学生や戦没画家の作品も展示していく計画だそうです。夏休みにお子さんと訪ねてみるのもいいかも知れません。
プチ旅の終わりは上田で晩御飯。の前に少しだけ街中を散策したんですが、駅から三分ほどのところに位置するみすず飴本舗の本店の建物が素晴らしかったー。
大正時代のレトロ建築で国の登録有形文化財です。ドアマンがいて、カウンターで接客してくれます。長野にきたらみすず飴どこでも売ってるけど、せっかくならこの本店で購入すると、ちょっぴりファビュラスな気分が味わえるかも♪ジャムのお味見もできるよ。
歯医者さんらしい。
昭和で時が止まったような映画館&ストリップ劇場。長野なのになぜ浅草。
晩御飯はB級グルメの美味(おい)だれ焼き鳥の有名店を2軒ハシゴしました。
どの店も軽くビールやチューハイを飲みながらお腹いっぱい食べて一人2000円行くか行かないか。私はタレは横綱のほうに軍配で、肉は鳥友が大きくてふわっと焼かれてて美味しかったです。
帰りのしなの鉄道に乗る頃にはもう真っ暗で、前を行く電車が鹿と衝突したため安全確認中でちょっと遅延、という東京では絶対ないなーという事件もありましたが、無事に帰宅。
去年は小諸行ってわりと面白かったし、プチ旅楽しいなー。今度は東京からのプチ旅考えてみようっと。
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