映画と展覧会でゴッホ三昧してきた。
今日は、先日オープンしたばかりのTOHOシネマズ上野で、映画「ゴッホ 最期の手紙」を見て、その足で上野の都美術館に行って「ゴッホ 巡りゆく日本の夢」を見るという、ゴッホ三昧な一日を過ごしておりました。
これ、2施設の間は徒歩15分ぐらいで行けちゃうので、セットで鑑賞するの、おススメです。美術館を先にすれば御徒町までは下り坂ですし、私のように映画を先にした人は、最後少し上り坂にはなるんですけど、最近の上野はすごくバリアフリー整備が進んでるので、さくらテラスっていうんだっけ?飲食店がいろいろ入っている建物のエスカレーター利用すれば、登り坂をダラダラ歩かなくても公園まで楽に行けます。
ちなみに上野の森の「怖い絵」展のほうは、昼過ぎに近くを通ったら地獄のような行列ができてましたが、ゴッホ展のほうの混み方は「並」程度でした。
ゴッホ展といっても、日本の浮世絵からの影響とか、日本の画家たちと、オベール シュル オワーズで晩年のゴッホの主治医をつとめたガシェ医師との交流エピソードなどを軸にした展示で、がっつりゴッホ!ってわけじゃないので(広重とか北斎の浮世絵の参考展示多数、それはそれで見どころなのですが)、去年ゴッホとゴーギャン展見てきた人とかからすると、コスパ悪い感じがするのかも知れません。浮世絵は浮世絵で、近くでガッツリ北斎展やってますしね。
そこは美術館の方でも少しは気にしてるのか、ゴッホ展の半券もっていくと北斎展の当日券が100円割引になる(逆もあり)みたいな相互割引企画をやってましたが、私は金券ショップで前売り券買うほうを選びました…ごめんよ…。もうちょい割引率がよければなぁ。
さて、先に鑑賞した映画のほうですが、これ、100人以上の画家を投入して、実写で撮影した映画を油絵アニメにしたという狂気の企画で、今どきデジタルのリタッチで、そこそこ油絵っぽい加工なんか簡単にできるのに敢えて画家を投入ってことが凄いと思う。
ちょこっと予告映像みていただければわかりますが、これがまた実にちゃんとゴッホっぽい絵になってるんですよ…好きな人なら「お、あの絵だね」ってすぐわかると思う。
美術関係にあまり詳しくない方は、せっかくなので、この機会に是非、ゴッホ入門的な画集を流し読みしてから鑑賞してみてください。「あれだ!」っていうのがわかると楽しさ3倍なので。
「知の再発見」双書とかが読みやすいんじゃないかと。あと弟のテオ宛の手紙とか読んどくと、もっと泣けるかも。岩波文庫にありますが、やっぱ小林秀雄の解説付きで読むのがいいかな。
作品は、ゴッホの死後に見つかった手紙を遺族に届けにきた青年が晩年のゴッホの足跡を辿り、その死の真相に迫る、ミステリー仕立てのドラマです。
生前のゴッホについて尋ねると、証言者たちはみなバラバラの印象を語り、前半では真相は藪の中なのかな…と思わせる進行ですが、2011年に出されたゴッホ他殺説も織り込みながら作品としてはそれなりの結論を設け、早逝の画家の晩年をうまくまとめて、ステレオタイプな「狂気の天才画家」のイメージを覆すことに成功しています。弟テオとの関係、実は胡散臭いガシェ医師の二面性とか、よく描けてると思います。
ちなみにこれ↓がゴッホ他殺説の本です。映画にあわせて文庫出したのかしら。私も読んでみたい。
『殺されたゴッホ』(小学館文庫)
正直、予告編見たときは、アイディア一発勝負って感じだけどとりあえずこの映像だけでも見てこよう、ぐらいの気分だったんですが、実際観てみたら、ストーリーも楽しめました。これで興味を持たれたら、ゴッホ本は日本・海外問わずほんとに沢山あるので、沼にはまってみるのも面白いと思います。
都美術館の展覧会のほうは先に書いた通り、ゴッホと日本の関わりをテーマにした展示で、ゴッホ自身の作品はさほど多くはありませんが、それでも日本初公開作品がいくつかあったし、有名な自画像やアルルの部屋の絵もあります。
個人的には、ペン画がよかった。色彩の画家とされますが、「柵のある公園」とか「麦畑と太陽」といった葦ペンの素描が思いのほか良くて、こういう作品だけの展覧会企画してくれないかなぁ…と思った。
あと、ゴッホって描いてた期間が短いこともあって、最初から天才的に上手かったような印象があるんですが、やっぱり上手くなっていってるんだよな、ということ。当たり前といえば当たり前ですけど、毎日毎日描き続けて800枚もの絵を遺したワークは伊達じゃないっていうか。
そういうタッチの変遷を見ながら、見たばかりの映画の中のゴッホの台詞や手紙の言葉を思い出してはジーンとする、という感じでした。彼がもっと長生きしてたらどんな絵を描いたんだろう、と思うとつくづく惜しい。
あのぐらいの時代って、ほんとに才能ある変わり者にとっては生きづらい時代だったろうなと思います。現代だったら「ちょっと変わった芸術家肌の人」で済むような繊細な人の多くが、狂人として施設に送られ、あまり適切でないケアの挙句にストレスで本当に鬱になったりして早死にしていったんだよなぁ、と思うと胸が痛む…
ゴッホの絵には、いわゆる「アウトサイダーアート」的な匂いはしません。なので、彼を狂人の天才っぽく祭り上げるのは間違ってると思う。日本画を模写して研究していたことなんかも、理知的に絵画を捉えていたことの表れだろうと思うし。
日本の浮世絵への興味も、本来はもっと多彩に続くはずだったいろんな『実験』の中の一つだったんだろうな…とは思いますが、それでも彼やその他の印象派の画家たちの浮世絵熱のお陰で、日本人はやたらと印象派には詳しく、今回のような企画展も開催されるので、有難いことではあります。
後半の、大正時代ぐらいの画家や文化人が、まるで現代のアニヲタのように「聖地巡礼」でオベール シュル オワーズを訪問しまくってた記録のコーナーも面白いですよ。芳名帳とかあるの。日本人のゴッホ好きの土台は、こういう風に戦争前に海外に出て行った画家や文人たちよって作られて行ったんだなぁ、というのが実感できます。
あと、若者のやることって100年ぐらいじゃたいして変わらないんだな、と思うと、昔の画家や詩人にも親近感が湧きますよね。
人気画家なので、展覧会のコラボグッズの量も半端ないです。榮太樓のゴッホ飴とか意味不明ですが、味は間違いないわけなのでアリといえばアリか。ヒマワリの種などの便乗グッズも微笑ましいです。缶入りのチョコは、食べたらペンケースに出来そうなので、それ考えるとおトクな感じでした。
買ってないけど『ゴッホっぽい色の毛糸』シリーズはとても魅惑的でした。これ他の画家のもあるのかなぁー。あれで、セーターとか編んだらすごーくゴッホっぽくなりりそう。
私はここんとこメガネ拭きが欲しかったので、リバーシブルのやつと、これからの季節に使えそうなマスクケースを買いました。チケットホルダーとしても使えそうです。
というわけで、アート満喫の土曜日でした。満足。帰り際に見上げた上野の空も、なかなか芸術的でした。
映画のほうは、やってるとこがあまり多くないんですが、展覧会効果でお客さん入るといいなーと思います。お時間ある方は是非、セットで行ってみてください。ていうか、映画と展覧会の相互割引もやろうよー。今後こういうタイミングの企画があったら、ぜひ連携してもらいたいです。
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