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【読書感想文#3-3】人生を豊かにしたい人のための世界遺産を読んで~後編~
皆様いかがお過ごしでしょうか?
世界遺産についての本を前回から引き続き、皆様に紹介します。
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員宮澤光さんが書いた『人生を豊かにしたい人のための世界遺産』という本です。
前編では過去の世界遺産には我々に向けたメッセージがあることを書きました。中編では世界遺産のもつ多様性やお金にまつわるお話を書きました。
今回は本で取り上げてきた「脅威」について感じたことを書いていこうと思います。
【目に見えないモノが本質的価値である】ということ
考古学の観点から、世界遺産が危機に瀕している状況をビジュアルと合わせて記した『消滅危機世界遺産』という本で、著者のペーテル・エークハウトは本の冒頭で、考古学に対する現状について、以下のように警鐘を鳴らしています。
「遺跡とは、化石燃料や金属鉱床と同じように、再生不可能な資源です。(中略)荒らされた墓場も、崩れた壁も、、過去の姿を示す傷だらけの床も、二度と戻らない人類の記憶の一部なのです」
昨今の自然災害や気候変動だけでなく、戦争や紛争で破壊された世界遺産(例をあげたらきりがないですが、アフガニスタンのバーミヤンやシリアのパルミラ遺跡等)もあります。一方で都市の開発によって世界遺産から抹消された「ドレスデン・エルベ渓谷」や「アラビアオリックスの保護区」「リバプール」のように、人々の生活と世界遺産の保護両立に挫折した例もあります。
また本でも触れているように、人々が意図せずに破壊した例もあります。例えばフランス・パリのノートルダム大聖堂や日本だと沖縄の首里城正殿があげられます。(厳密にいえば首里城正殿自体が世界遺産の構成要素にならず、正殿の地下にある基壇の遺構や周辺の城跡の一部が世界遺産の構成要素です)
こちらは復旧や復興に向けて動き出していますが、世界遺産が世界遺産として価値を有する基準の一つに「真正性」があります。
真正性とは文化財に使われている素材などがそれぞれの文化的背景の独自性や伝統を継承していることを指します。
首里城正殿の場合だと、瓦屋根の色や形、素材、工法等を様々な文献を検討しながら復元を進めています。
それにはもちろん破壊される前までに十分な研究や分析が行われていなければなりませんし、遺産の持つ価値や特徴を再建する際は真正性を残さなければなりません。ただこの再建自体が単なる文化財の再建を超えて、沖縄の人々が自分たちの誇り・精神性を取り戻す作業につながるのだとと思います。これはパリのノートルダム大聖堂も同様で、周辺に住む人々の心の中心に世界遺産が存在していることを示しています。
世界遺産は、その社会の中で機能・役割を与えるべきだと世界遺産条約に示されています。
世界遺産が単にその建造物や景観だけではなく、人々の心の中心にあるべきもので、そうした精神性こそが、世界遺産の持つ本質的な価値なのです。
【最後に】
世界遺産検定を経験したことで、この本をより一層深く理解することができました。
今後も世界遺産についての書籍がありましたら、皆様に紹介したいと思います。
今回も読んでいただきありがとうございました!