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【メンバーシップ限定記事(一部無料)】 ACT - Journey10 ACTの臨床応用例⑴
※本記事は医学的根拠のある論文などから引用をしつつも医師による専門記事ではない為、あくまで個人的見解も含む点をご留意ください。
はじめに
これまでのJourneyでは、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)が提示する多面的な理論的基盤とコアプロセスを、様々な観点から精緻に検討してきました。機能的コンテクスト主義や関係フレーム理論(RFT)といった哲学的・科学的基盤から始まり、心理的柔軟性モデル全体の概観、そしてアクセプタンス(受容)、認知的脱フュージョン、自己の文脈化、現在志向の意識(マインドフルネス)、価値の明確化とコミットメントなど、ACTを支える個々のプロセスを丹念に掘り下げてきました。
これらのプロセスは独立して機能するのではなく、相互に影響し合い、補完し合いながら、クライアントの心理的柔軟性を高めていきます。特筆すべきは、各プロセスが内的経験(思考、感情、身体感覚、記憶など)との関係性を変容させる独自の役割を持ちながら、最終的には価値に沿った柔軟な行動選択という共通の目標に向かって収斂していく点です。この統合的なアプローチにより、クライアントは症状や困難を抱えながらも、意味のある人生を築いていく可能性を見出すことができます。
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現代社会における精神障害の課題
今回のJourneyでは、ACTが臨床現場で実際に遭遇する代表的な精神障害—うつ病、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)— などに対して、どのように適用され、どのような有益性が認められるかをより具体的かつ詳細に考察していきます。
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