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【メンバーシップ限定記事(一部無料)】 ACT - Journey12 ACTと組織行動 - リーダーシップ、組織開発、職場のウェルビーイング

はじめに

 これまでのJourneyでは、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の理論的基盤と心理的柔軟性モデルに着目し、臨床応用や健康行動変容への活用について多角的に検討してきました。ACTは、当初、心理療法の領域で注目され、うつ病、不安障害、PTSD、慢性疼痛、物質使用障害、さらには身体疾患に対する支援方法として有用性を示してきました。しかし、ACTの本質的な価値は、その適用範囲がはるかに広いことにあります。「人間行動と内的経験との関係性を再構築し、価値に基づく行動を可能にする」という基本的な枠組みは、特定の臨床状況に留まらない汎用的なアプローチとして、人間行動や社会組織が存在するあらゆる文脈で応用可能な理論・実践モデルとなり得るのです。

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現代の組織が直面する課題

 昨今の組織は、かつてない複雑性と不確実性に直面しています。グローバル化、技術革新、社会構造の急激な変化は、組織とそのメンバーに対して継続的な適応と変革を要求しています。世界経済フォーラムの報告によれば、企業の平均寿命は過去50年間で半分以下に短縮し、組織の持続可能性そのものが大きな課題となっています。

こうした環境下で、従業員のストレスやメンタルヘルスの問題は深刻化の一途を辿っています。世界保健機関(WHO)の最新データによれば、職場のストレスとメンタルヘルス問題による経済損失は全世界でGDPの4%に相当するとされ、その影響は年々拡大しています。バーンアウト、離職率の上昇、モチベーションの低下、組織への帰属意識の希薄化など、従来の組織マネジメントでは対処が困難な問題が山積しています。

従来のアプローチの限界

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