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かぼちゃプリンは突然に
あ、今日はまだ残ってる。かぼちゃプリン。
最寄りのコンビニがチョコレートフェアを始めた。それまではどこも芋栗かぼちゃフェアで、どのスイーツも黄色や橙色をしていたのに、スイーツコーナーはがらりとシックなダークブラウンに変わった。
隅の方にかろうじてまだ芋栗かぼちゃの名残が残っており、肩身狭そうにわたしを待つかぼちゃプリンを誰に取られるわけでもないのに素早く手に取った。
プリンは『個人的好きなスイーツランキング』でも上位に入る。友達とカフェに入った際に、メニューに“プリン”と書かれていたらわたしはそれ一択だ。「決まった?」と聞かれたら「うん、プリン!」といつも即答するので「あなたはいつでもプリンだよね」とどの子もみんな笑ってそう言う。
普段はベーシックな硬めのプリンが一番好きなのだが、かぼちゃプリンだけは並ぶくらいに好きである。それはおそらく父の影響なのだろうな、と思いながら会計を済ませてコンビニを出た。
・・・
昔、わたしがまだ小〜中学生くらいのころ。
仕事帰りだっただろうか。なんてことはない普通の日に、父が突然ケーキの箱を持って帰ってきた。
「え、これ何?」とわたしが聞くと、父は嬉しそうにじゃじゃーんと言って箱を開けた。その中に小さなケーキ数個と、かぼちゃプリンが入っていた。父は「今日ハロウィンだっけんに」と得意気に言った。ケーキ屋で作業着を着た男が「かぼちゃプリンをください」と注文している姿を想像して、わたしは父のお茶目さに笑ってしまった。
それ以来、かぼちゃプリンを食べるたびにあの誰よりも嬉しそうに箱を開けていた父の姿を思い出す。わたしがプリンが好きだと覚えていて、買ってきてくれたのだろうか。そんなことを思いながら、かぼちゃプリンをプラスチックの小さなスプーンで掬う。むちっとした硬めの黄色いプリンとほろ苦いカラメルが、あの日を思い出させる。
父はこの出来事を覚えているだろうか。いや覚えていないだろうな。なにせそういう「誰かが喜ぶなら」という事がさらりとできてしまう人だから。わたしもいつか突然、誰かのためにかぼちゃプリンを買って帰る日が来るだろうか。どうしたのこれと聞かれたら、「ハロウィンだっけんに」と嬉しそうに言う日が。
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モンブラン部分が寄っちゃった