理念 -「努力」の哲学、松下幸之助を中心に(4/4)
企業は営利追求だけを目的とするのではないと言えばきれいごとに聞こえるだろうか。松下幸之助は、事業というものは社会に貢献し人々の生活を向上させる存在であるべきだと考えていた。また、企業は公明正大に運営され、私利私欲を追求すべきではないと考えていた。
松下は、企業の目的についてこう語っている。
「一般に、企業の目的は利益の追求にあると言われる。たしかに利益は健全な事業経営を行う上で欠かすことができない。しかし、それ自体が究極の目的かというと、そうではない。根本はその事業を通じて共同生活の向上をはかることであって、その根本の使命を遂行していく上で利益が大切になってくるのである。そういう意味で、事業経営は本質的には私の事ではなく、公事であり、企業は社会の公器なのである。だから、たとえ個人企業であろうと、私の立場で考えるのでなく、常に共同生活にプラスになるかマイナスになるかという観点からものを考え、判断しなければならないと思う」
松下は、企業の利益は重要だが、それは究極の目的ではないと説く。企業の根本的な使命は、事業を通じて社会の発展に寄与することだ。
この哲学は、現代にも通じるものがある。企業は社会の一員として、その責任を果たさなければならない。利益を追求するだけでなく、事業を通じて世の中をよりよくしていくことが求められているのだ。
松下の理念は、他の経営者にも共通して見られるものだ。
「開発というものは企業のためにやるんじゃない。世の中に貢献するという気持ちがなければいけない」(本田宗一郎・本田技研工業創業者)
「動機が善であり、私心がなければ結果は問う必要はありません。必ず成功するのです。(動機善なりや、私心なかりしか)」
「事業を興す時でも、新しい仕事に携わる時でも、私はそれが人のためになるか、他を利するものであるかをまず考えます」(稲盛和夫・京セラ・KDDI創業者)
本田宗一郎は、開発の目的は世の中への貢献であると説き、稲盛和夫は、事業の動機が善であることの重要性を強調している。いずれも、企業は社会のために存在するという理念を共有しているのだ。
松下幸之助の「理念」の哲学は、企業の存在意義を問い直すものだ。利益は重要だが、それは企業活動の結果であって目的ではない。企業の真の使命は、事業を通じて社会に貢献し、人々の生活を向上させることにある。この哲学は、私たち一人一人が企業の社会的責任について考える上で、重要な指針となるだろう。
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