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「努力」の哲学、松下幸之助を中心に(1/4)

「私は天からの3つの恵みを受けて生まれた。家が貧しかったこと、体が弱かったこと、小学校までしか進学出来なかったこと。」

松下幸之助は、自らの人生において「努力」を何よりも大切にしていた経営者だ。彼は、厳しい環境下でも決して諦めることなく前進し、卓越した実力と謙虚さを兼ね備えた人物として知られている。

松下は、自身の成功の秘訣について次のように語っている。

「私は天からの3つの恵みを受けて生まれた。家が貧しかったこと、体が弱かったこと、小学校までしか進学出来なかったこと」

一見すると不利な条件ばかりに思えるが、松下はこれらを「恵み」と捉えていた。貧しさゆえに勤勉に働くことを学び、体が弱かったからこそ健康の大切さを知った。また、高等教育を受けられなかったことで、常に謙虚に学ぶ姿勢を持ち続けられたのだ。松下は、これらの経験が自身を鍛え、成功へと導いたと考えていたのである。

松下の生い立ちを振り返ると、その「努力の哲学」の原点が見えてくる。9歳で丁稚奉公に出され、十分な教育を受ける機会に恵まれなかった。16歳で大阪電灯(現・関西電力)に入社し、23歳で起業して二股ソケットを発明。その後、パナソニックの前身である松下電気器具製作所を設立した。

幾多の困難を乗り越え、松下電器産業(現・パナソニック)を日本を代表する家電メーカーに成長させた。売上高は過去最高で10兆円近くに達した。

松下は、成功には才能ではなく努力が必要だと説いた。彼はこう述べている。

「商売というものは真剣なものである。真剣勝負と一緒だ。真剣勝負において、首をはねたり、はねられたりするうちに勝つというようなことはありえないのと同じように、商売も活動するだけそれだけの成功は得られなくてはならない。もしそうでなかったならば、それは環境でも、時節でも、運でも、なんでもない。その経営の進め方に当を得ないところがあるからだと断じなくてはならぬ。それを商売は時世時節で、損もあれば得もあると考えるところに根本の間違いがある。商売というものは、不景気でもよし、好景気であればなおよし、と考えねばならぬ」

また、松下は謙虚さを大切にし、「自らを直視すること(自己観照)」を説いた。過ちを反省し、常に学ぶ姿勢を失わなかった。

松下幸之助の「努力」の哲学には、確固たる「理念」が根底にあった。現代社会では、AIやロボットなどの技術革新が進む一方、人間の役割はますます重要になっている。松下の哲学は、こうした時代において私たちに何を示唆してくれるのだろうか。

ここでは、松下幸之助の「努力」の哲学を「あきらめない」「謙虚さ」「理念」の3つの要素に分けて紹介する。


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