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『営業部門⇒R&D/生産部門⇒広報部』というトランジション

会社勤務時代、最も驚きだった【営業部門】(4年)⇒【R&D/生産部門】(2年2ヶ月)⇒【広報部】という異動。

本社の「人材開発センター企画室」から、「名古屋支店業務部」(営業部門である支店の数値管理・エリアマーケティング等を担う)に転勤になって4年目。

突如(人事はいつでも突然かも)、人事異動がやってまいりました。

まず、「待機命令」が出て、指定された日(大体翌日)に指定の別室で人事部からの電話がすぐに取れるように待機。

異動先は、「医薬品原薬」の研究開発(R&D)及び生産拠点である『鹿島事業所』の総務室(研修担当)。

原薬のR&D及び生産拠点❓❓❓

営業の現場から『最も遠い』と思われた、医療用医薬品の「原薬」を研究開発したり、化学合成したりする現場24時間稼働(夜間は自動運転)の化学プラント。

鹿島事業所は、茨城県でも千葉県の銚子に近い、鹿島臨海工業地帯の一角にある「波崎工業団地」(この辺は「波崎トライアスロン大会」や風力発電で有名)に立地。

正門前には、道路を挟んで「三菱化学鹿島事業所」が隣接。大きな化学系企業の工場が集結してるエリアです。

住居を「鹿島神宮」「住友金属工業(現・日本製鉄)」の城下町として有名な『鹿嶋市』(鹿島アントラーズの拠点)に定め、波崎まで車で約40分、往復約60km(1か月1,200Km)の車通勤に。

赴任してから、日々驚きの会社生活が始まります。

👉「鹿島事業所」赴任時の支給物
【装備品】
・ヘルメット❗️
・防護メガネ❗️
・安全靴(つま先に鉄片入り)❗️
・ユニフォーム(上下)
・名札

【書類】
・『生産用語100語』❗️
 (A5、約50ページ)
・『生産技術入門』❗️
 (A4、約150ページ)
・安全確認カード
・業務マニュアル
・防災マニュアルなど 

入社以来20年、スーツにネクタイで仕事をしてきたのに、突然、『私服で車通勤』『事業所の更衣室でユニフォームに着替え』『現場に行く時はヘルメット・防護メガネ・安全靴着用』という世界へ。

同じ会社なのに、使われる言葉(専門用語など)・意識(特に防災・安全関連)・行動が全く異なります。

毎朝、管理棟前で体操と朝礼。
お互いの健康状態等を目視で確認。
(体調不良で仕事に従事するのは危険なことから)

さらに、当番で「宿直❗️」があり、警備棟にある宿直室に宿泊、夜間に1回1時間かけて終夜稼働している生産棟や研究棟を巡回、緊急事態に備えました。
*宿直担当者は、事業所で半年以上の実務経験、安全講習受講等が必須

生産ラインに異常が発生すると宿直室に警報が鳴り響くので、速攻で起床し事業所近くに居住する責任者の方に電話、対応を要請します。

「リアリティ・ショック」は半端ではありません。

👉事前の「鹿島事業所」のイメージ
 化学工場なので24時間稼働。SOP(Standard Operating Procedures:標準作業手順書)に従って、低コスト生産をこなす。
👉赴任してわかった「鹿島事業所」
「プロセスケミストリー研究所」が併設
され、研究開発と生産が一体となってプロセス イノベーションに邁進してる。
ドクター・マスターが研究から生産ラインまで張り付いて仕事をしてる。

プロセスケミストリー研究(工業化研究)は、例えば、筑波・ボストン・ロンドンの創薬研究所で「1g1,000万円」かけて合成した化合物を商業ベースに乗せるため、「1g10万円」でつくれる合成プロセスを開発するしごと。

いわゆる『プロセス イノベーション』が任務。

👉化学合成のプロセス イノベーション(例)
・「高圧」
「常圧」
・「高温」→「常温」
・「危険な溶媒」→「安全な溶媒」
・「コストのかかるカラム法」→「結晶法」

など、創意工夫で合成コストを下げていきます。

実際にこれらの「何律も背反する課題」を全て解決し、品質も収率も高めたイノベーションを実現、鹿島事業所が社内表彰を受けたことも度々。

「化学」のダイナミズムを初めてリアルに実感。

鹿島事業所では、通常の総務事務とともに、研修担当として「安全研修」「GMP(Good Manufacturing Practice)研修」「企業理念にかかわる研修」等を担当。

また、プロセスケミストリー研究所で開催の勉強会にも参加させていただき、文系ながらも化学を学ぶ時間を過ごしました。

当時の「プロセスケミストリー研究所」左右田所長は「プロセス化学」の世界では第一人者。

1999年には、名古屋市立大学薬学部の塩入孝之教授(現・同大名誉教授)と「プロセス化学研究会」を立ち上げることになります。

この研究会は、製薬関連企業で「プロセス化学研究」に携わる研究者が参集し、三井物産、京大、名市大、塩野義製薬、藤沢薬品(現・アステラス製薬)等を会場に7回の会合を経た後、2002年1月に『日本プロセス化学会』という学会に発展しました。

「文系社員」が右も左もわからないまま、鹿島事業所の原薬R&D・生産という機能を支援する総務担当者として赴任し、2年2か月が経過。

再び、人事異動(トランジションにおける終わり)が年度の変わり目では無く、5月に唐突にやってまいりました。

管理棟の会議室で人事部からの電話に出ると、『  "来週から"  本社の「広報部」に出勤してください! 』

来週から❓❓❓

ブリッジズ先生が指摘する「終わり」に生ずる「(慣れ親しんできた場所や社会秩序からの)離脱」「(既存の行動パターンの)解体」「アイデンティティの喪失」「方向感覚の喪失」「覚醒(気づき)」などが、一遍に到来しました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!

(続く)

写真:奥多摩登山道の木漏れ日
木の葉の隙間がピンホールとなり、太陽の姿が逆さまに投影されています。
(2019年頃)

📕『企業研究者たちの感動の瞬間
ものづくりに賭けるケミストの夢と情熱』
日本プロセス化学会
化学同人(2017/03/15)

📗医薬品のプロセス化学(第2版)
日本プロセス化学会
化学同人; 第2版 (2013/4/2)

📕『Transitions ーMaking Sense of Life's Changes』
William Bridges先生
‎Da Capo Lifelong Books/DA CAPO PR INC/Little Brown他
(1980〜2020)

📙『トランジション ―人生の転機/人生の転機を活かすために 』
ウィリアム・ブリッジズ 先生
創元社 (1994/11/1)
パンローリング (2014/3/15)

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