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若者至上主義の終焉と日本社会の転換点
日本の労働市場は、かつての新卒一括採用と終身雇用が特徴であったが、時代とともにその姿は変わりつつある。しかし、依然として企業側には若い人材を採用したいという希望が根強く残っているようだ。かつては、若者は低賃金で長時間働いてくれる存在と見なされていた。また、若者であれば会社独自の教育を施しやすく、自社のやり方を短期間で吸収させられると考えられていた。中途採用では、初年度から高い給与を払う必要があり、さらに既存のやり方に固執する傾向があるため、教育が難しいとされていた。
だが、こうした前提は今や変わりつつある。以前は、若者が自分を下位の存在と認識し、先輩の指導を謙虚に受けることが当然とされてきた。学校教育でも、部活動などでの先輩後輩の序列が強く意識され、若者はその中で育ってきた。しかし、現代の若者は、平等に接することを前提とする価値観を持ち、年功序列ではなくなった企業文化の中で育ってきている。そのため、職場で先輩からの指示を受けることが、彼らにとっては「押し付け」や「パワハラ」として受け取られることもある。こうした状況の中で、教育や指導を担う上司たちも、どのように接すべきか戸惑いを感じている。
その結果、上司たちは教育を避けるようになり、若手社員は自分のやり方で仕事を進めることが増えていく。職場では次第に歯車が狂い始め、仕事のスキル向上が妨げられることになる。それでも、若者たちは自分流の仕事の進め方を信じており、古い価値観を「時代遅れ」と見なして変えようとする。これが、職場でのギクシャクした関係を生み出している。
特に問題なのは、責任感に対する意識の変化である。一定の年齢以上の世代は、「自分が引き受けた以上、責任を持ってやり遂げる」という意識が強く、仕事に対する責任感を重要視してきた。しかし、現代の若者たちは「やりたいことはやるが、やりたくないことはやらない」という姿勢が目立つ。彼らにとって、気分や感情が行動の優先事項である。たとえば、大きなプロジェクトを任されても、自分がうまくいかないと感じたら、途中で投げ出すことも厭わない。会社にとって重要な案件でも、個人的に興味がなければ取り組まないことがある。上司の意見に対しても、自分にとって心地よくなければ無視する。これは「自分の心に忠実に生きる」とも言えるが、企業側からすると「素直に指示を聞いてくれる若者」という期待を裏切るものでもある。
このような状況で、企業の採用方針も次第に変わりつつある。これまで、若者の柔軟性や低コストを期待してきたが、その実態を知ると、むしろ責任感の強い中高年の方が安心して仕事を任せられることが見えてきた。分析力に富む企業はすでに中途採用を中心に切り替え始めており、責任感や業務遂行能力が高い層に期待を寄せている。若者が「やりたくないことはやらない」というスタンスであれば、次第に企業は若者を採用しなくなる可能性が高い。
これからの日本の労働市場では、過去のような「若者至上主義」が見直されることが予想される。実際、日本の労働環境はもはや「働きすぎ」とは言えず、国際的には労働時間もそれほど長くない。問題は、日本社会が能力も努力も伴わない、文句ばかりの人々で溢れかえりつつあるという現実である。日本の未来がどうなるか、不安を抱かざるを得ない。