初日
相撲で、その場所の初勝利が出ることを、「初日が出る」という。そんなことは、私が拙い解説をしなくても、誰もが知っていることでは、あろう。
私は、スポーツを、よく、見る。そして、この人は、凄いと思う、アスリートも、たくさん、いる。
そんな中でも、キングカズは、私にとって特別な存在であることは、以前の記事でも書いた。
そして、その縁もあり、私は、横浜FCの、ファンなのである。
その横浜FCが、とてつもなく低迷している。
2019年のシーズンで、J1昇格を決めた。まずは、J1残留を目指して戦うべき2020年は、変則的な年となり、降格は、なくなった。
だが、今年は、降格が、ある。
J1昇格時から指揮をとっていた下平監督が、4月7日に、解任。5月15日まで、J1チームの中で、唯一、勝利が無かった。つまり、初日が出なかった。
5月15日は、私は、ネット配信で観戦した。
そして、食い入るように、見た。
2点目が入った時には、本当に、思い切りガッツポーズを、した。
思い起こせば、この、5月15日は、Jリーグが発足した記念日、Jリーグの日である。
むかしの日本のサッカーは、弱かった。W杯予選で、必ず敗退していた。世界に出ていく選手は、皆無に近かった。
ドーハの悲劇も、あった。
だが、翌年の、ジョホールバルの歓喜で、W杯初出場を果たす。その後、W杯に常時出場するチームに成長し、世界にも選手を数多く輩出するようになり、時を経て今の日本サッカーがある。
Jリーグがあったからこそ、今の、日本のサッカーが、ある。そして、そのJリーグを引っ張ってきたのは、紛れもなく、キングカズだと思っている。
その、功労者であるカズは、日本が最初に出場権を獲得したW杯本戦の代表から、なんと、落選したのである。
スポーツの世界は、厳しい。結果が出なければ、容赦無く外される。トップ選手になり、息長くプレーし、記録も名も残す選手は、ほんの、一握りだ。そう考えれば、ときの指揮官が、必要ないと判断すれば、それまでの実績がどうであれ、外されることは、大いに、ある。
だが、私は、カズは、ただただ、偉大だと思うのである。
今、カズは、横浜FCの、レギュラーメンバーではない。低迷するチームにおいてすら、レギュラーではない。
だが、カズがいるチーム。カズが、出場するかもしれないという期待感だけで、私は、胸が高鳴るのである。
そして、本当に、出場したとしたら、私は、その都度、泣いている。
我慢しようとしても、とめどなく涙が出てくるのである。それは、もちろん、悲しい涙ではない。でも、嬉し涙とも、少し、違う。
感謝に近い感情で、とめどなく、涙が溢れ出てくる。
今年、横浜FCが、J1に残留するのは、至難の業である。案の定、「初日」が出てからも、2連敗している。今、ダントツに、最下位である。だが、どんなに情けない試合をしたところで、私は、最後の最後まで、奇跡が起きることを信じている。今年の残留は、極めて厳しい。どうなるかは、神のみぞ、知るところだ。それを、今年は、最後の最後まで、ただ、見守っていきたい。
いつか、目の前で、カズゴールを観てみたいものである。そして、その時は、願わくば、満員のスタジアムで、観客のみんなが拳を上げ、両手をかざし、大声で歓喜の声を出して、泣いて、抱きつきあって、その喜びを、パッションを、分かち合いたいものだと、思うのである。