ショートショート_プレイボーイ
紅葉から思い浮かぶのは、この一節である。
からくれないにみずくくるとは。
百人一首、確か17番目の、在原業平の和歌である。歴史に名高いプレイボーイの歌だが、なかなか良い歌でもある。
17番というと、今日、ようやく横浜FCがJ2で2位を決め、来期のJ1自動昇格を勝ち取った。0-0のスコアレスドローという、泥臭い決め方がまた、いかにも横浜FCらしい。
背番号17番は、今年で引退を決めた、武田英二郎の背番号である。前節、今季最後のホームゲームで引退セレモニーを行った。チームとしても本人としても、本当ならば勝って昇格を決めてハッピーエンドと行きたかっただろうが、それが持ち越しとなった。だが、今日はスタメン。途中交代とはなったが、現役最後のピッチを、J1昇格で踏みしめた。
正直、私は、ホッとした。
前節は、神などいないのではないかなどと不届きな思いをしたが、やっぱり神様は、いたのだ。
そしてもう一人。私が殊更言うまでも無いが。17番というと、大谷翔平だろう。彼は、まるで漫画のようなとんでもない現実を私たちに見せてくれている。
怪我で投手としての活躍は封じられたシーズンが始まった当初。兄弟のように近しかった通訳の不祥事。巨額の金額が絡む大事件でスタートし。結婚はしたものの、成績も振るわず、ひょっとしたら起訴されるのでは無いかという暗雲立ちこめるところからのスタート。いよいよ大谷翔平の運も尽きたかと思った人も多かったかとは思うが。シーズンが進んでいくと、あれよあれよと記録を作り。評論家は無理だという中で、前人未踏の50-50まで達成。プレイオフを通り越し、なんと、ワールドチャンピオンである。
春は、神などいないのではないか、などと不届きな思いを抱いたが、やっぱり神様は、ここにも、いた。
恋多きプレイボーイ。私自身は、あんまりそういう人種は好きではない。武田英二郎も、大谷翔平も、とてもストイックな人物である。だが私の親しい友人に、業平に似たような人物もいた。よくよく会話をしているうちに、彼の言い分や流儀も、まあ、理解できないでは無かった。
彼のあだ名は、「なりひら」ではなく、なぜか「ドロンパ」だったが。そこがまた、可愛らしかったのもある。
業平は、稀代のプレイボーイだったが、神への敬意は、人よりもあったように、勝手に私は思っている。
ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ
からくれなゐに みずくくるとは
恋の駆け引きは、あちこちでやりすぎると修羅場を迎える。そんな、ひりひりする、軋む恋を楽しむくらいならば、のんびり芝生に寝転んで、空を眺めている方が気分がいいよ。
ドロンパに、そんなことを、授業をサボったクラブハウスの屋上で諭したことがある。
彼は静かに笑ったが、無論、余計なお世話だった。
人は辛いとき、とかく、この世に神などいるものかと毒づいてしまうものなのであるが。そこは言葉を飲み込んで、涙を噛みしめてでも、一歩前へ、今の自分ができることをやり抜こうと思う次第である。
さて、今年最後の大相撲11月場所が、今日、始まった。今日から、大好きな二週間である。
そんな日曜日の夜に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、毎週木曜日に出る。
そして、今回のお題は、「紅葉から」から始まる小説・詩歌・エッセイなどを自由に書いてみませんか?ということで。
そして、たらはかにさんからのお題は…。
表のお題が【長距離恋愛販売中】で。裏のお題が【缶蹴り恋愛逃走中】|д゚)チラッ、ということだ。
そしてそして、山根あきらさんのお題は、ちょっと早めに出る。
タイトルあるいは文中で、「軋む恋」(きしむ恋)という言葉を用いてください。※漢字でも、ひらがな、カタカナでもかまいません。ということで。
今回は、「800字以上」の「読み切り小説」または「エッセイ」。という字数制限もあり。あきらさんのことだから、許してはくれると思うのだが、800字の部分は、冒頭のエッセイ部分で一応全うしたことにして頂ければと思うのである。もちろん、ショートショート本文にも、このお題は、入れる。だが、ショートショートnoteとするために、字数は410字程度、というところで作ることにしよう。
また、今回も、シロクマ文芸部作品を読んでみた。ナルさんの記事である。ちょっとその感想を述べてみる。
シロクマ感想文を書こうと、「シロクマ文芸部」・「紅葉から」で、検索して飛んでいった。
いやいや、ナルさん。
グー○ルピ○セルのCMじゃないよ。
消しゴム○ジックの宣伝とかじゃないよ。
わかっておりますとも。笑
今ではカメラ側の技術で、素人でもそれなりの写真が撮れてしまうし。撮った後に加工も自由自在。良い時代になったものだと思う。
紅葉を写真に収めたくて人を消したい写真家で始まり。紅葉を見惚れる人混みが好きな神様で締める。
見事だと思うのだ。その、対比が。
私も、あなたも。いつまでも、神に好かれる人間でありたいものだと、思わないだろうか。
生きていることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
小牧幸助さん、たらはかにさん、山根あきらさん。3人とも、私は、大好きである。そして、毎週繰り出されるお宝のお題たちが、毎週の日曜日の、私の励みである。
だが、小牧幸助さんのシロクマ文芸部のお題、シロクマ感想文、たらはかにさんの毎週ショートショートnoteの表裏のお題。山根あきらさんの青ブラ文学部のお題。すくなくとも5重のお題を入れ込んでしまう「荒技」。
この日曜日の荒技、やり始めてからこれで1年と4ヶ月を過ぎた。まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟つぶやいた。
なんだか、きかん坊の悪ガキだな。
わかっちゃいるけど、やめられない。
なんのはなしですか。
さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「プレイボーイ」約410を、どうぞ。
☆ ☆ ☆
紅葉から離れていない場所に、在原業平がいた。
涼は時空ミッションで過去に来ており。なぜか悪の枢軸に狙われている彼の警護をしている。
彼がいなくなると、大きく歴史が歪んでしまうらしく。ミッションが下されたのである。
「涼、これを奈良の女房に手渡せ。彼女にはかなりの額を貰った。お返しだ」
「金を返せと言われたら?」
「それを渡せば、必ず黙る」
業平は、ニヤリと笑った。
「そうそう。新たなあれを出せ」
涼は、現代から持ち込んだコーラ缶を飲み干した。
業平は女性たちを庭に集め、それを置いて余興を始めた。昭和の子供ならば誰でも知っている、あの遊びだ。
鬼になったのは業平に思いを寄せている女性で。
彼女の隙を狙い、業平は缶を青空へ遙かに蹴り飛ばして逃げ果せた。
「歌も上手いが、逃げ足は、更に逸品だ」
涼は、ボソリと呟いた。
「歌の神様が、私を守ってくれる」
彼は、常に軋む恋を抱えながら。いつもそう言いつつ、後世に残る歌を数多く詠み、奔放に生き抜いた。
☆ ☆ ☆
荒技を書き終えて背伸びをしながら振り向くと、ソファーのさっちゃん(注1)が言った。
noteよりもさぁ、マッサー頼むわ。ここに、荒技は、いらんよ。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。