腕時計
今の私は、デジタルウォッチをしている。私は、腕時計に、それほどお金をかける方ではない。むしろ、お金をかけない。
ただ、少しこだわりがある。それは、バイブレーションでアラームを鳴らせることと、できれば、デジタルとアナログの両方が見られるタイプ、そして、電波ソーラー充電方式がいい。
しかし、デジアナ両方というのは、今や、ほとんど存在しない。まして、バイブレーション機能が備わっている腕時計となると、ほとんど皆無に近い。最近流行の、最新式スマートウォッチならば、デジアナも、バイブレーション機能も備わっているのだろうし、もっと多機能なのであろうが、残念ながら我が家には、私だけが贅沢をする余裕は、無いのである。
私が今、使っている腕時計は、長男のお下がりである。
長男が中学に入学したときに、私が購入してきた。長男が入学した中学までは、ちょっとした道のりになるので朝早く家を出る必要があり、行き帰りは電車で寝ていることも多かろうし、乗り過ごしたりしないようにということで、バイブレーションのアラーム機能があるものを選んだ。そして、電波ソーラー充電方式だ。
これを購入したのは、2007年のことである。随分昔だ。だがその時でさえ、バイブレーションアラーム機能が搭載された、電波ソーラーの腕時計は、なかなか無かった。秋葉原の電気街でかなり探した覚えがある。
長男は、大学に入学したときに、入学祝いに、腕時計が欲しいと言った。
私が中学入学の時に買ってあげた腕時計は、大学受験のときに、ベルトが切れていた。ベルトが一体型だったので、修理に費用も期間も、かかる。そこで、新しい腕時計が欲しいということになったと記憶している。
長男の腕時計は、まだまだ使える。
修理には少しお金と時間がかかったが、私は、修理することにした。
腕時計。たかが腕時計なのだが、捨てたりなど、出来ようはずもない。それは、勿体ないとかいう理由ではない。家族が大切に使っていたもの。思い出の詰まったものを、手放すことなんて、私には、到底できないのである。
家族も愛おしい。そして同時に、家族が大切にしているものも同時に、私には、愛おしくて仕方がないのである。
長男の大学入学祝いの腕時計は、少しだけ高い腕時計だった。もちろん、今の私がしている、長男のお古の腕時計は、それに比べると安いし、古い。そして、ところどころ、綻んできている。だが、この腕時計は、どうしても使えなくなるまで、私は、使い続けるだろう。
なぜならば、これは、長男が使い続けていた、長男の、思い出がたくさん詰まった、腕時計だからである。
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