
スマホカバー
家内のスマホカバーは、家内のお気に入りである。もう、何年も使っている。使っている間に少しずつ、ヒビが入り、欠けて、とうとう上の部分が一辺、抜け落ちてしまった。
今まで何度か、
もうそろそろ新しくしたら?
と進言したが、
これ以外に気に入ったものが無いのよ。
家内は、そう、応えた。
家内のこだわりポイントは、ポイ活とクーポン、そしてそれらを含む節約なのだが、たまに行き過ぎることがある。そういう面は、所謂インナーに現れることが多く、時に、穴の開いたシャツや、〇〇ティーを室内で披露されることがある。
いい加減、新しくしてもらわないと、私の稼ぎが余りにも少ないと思われてしまうじゃないの。
と冗談交じりに問いかけると、まじまじと私の顔を見て、
だって、本当に少ないもん。見栄を張っても仕方ないでしょ。それに外から見えないし。良いのよ。
とグサリと突き刺してくる。
……。
おいおい、超豪速球だなと心の中で小声を伴った苦笑で応えるも、実際には何の反論も出来ない。事実は事実として素直に受け止める。
スマホカバーは、落としたときの衝撃を和らげる機能を持ち合わせている。これが不備であると思わぬ出費に繋がることになる。だから、
カバーでケチると、スマホが壊れることに繋がる。むしろ、金額的には痛手になるから、早く変えようよ。
そう言ってかなり長い間、家内を説得するも、多少欠けているぐらいではなかなか納得しなかった。ところが現段階ではすでに上辺が露出している。こうなると素人でも、マズいことは明白には、なった。
家内は、
うん。そろそろ変えないとね。
そう言って重い腰をようやく上げてくれた。
そういうやりとりをしてしばらく経ったと思ったので、家内に確認をしてみた。すると、
ああ、決めたよ。新しいの。
おお、そうか。ようやく決めてくれたか。ありがとう。
で、決めたというデザインを見てみた。
……。
家内は、色々な物を検討してみたものの、結局は全く同じデザインを購入していた。
家内のこだわりポイントは、ポイ活とクーポン、節約、そしてスマホカバーだということに、30年連れ添って初めて、今夜、気付かされた。