ショートショート_帰りたい場所
白い靴を、次女は履いている。だが時に、黒い靴も履いていて。マイナースポーツのアスリートを実業団でやっているので、ほとんどはスニーカーだ。
靴のサイズは、私や長男とほぼ同じ。私は次女のお下がりのスニーカーを履いたりする。
私は、仕事オフでプライベートで過ごすときにはクロックスを履くのだが、私のクロックスは、長男、次女、私の三人で使い回しをすることになる。子供たちが我が家に集まったときには。
次女のお下がりが我が家にたくさんたまってきたので、また、整理整頓する時期が来たようだ。
そんな日曜日の午後に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、木曜日に出る。
そして、今回のお題は、「白い靴」から始まる、小説、詩歌、エッセイということで。
そして、たらはかにさんからのお題は…。
表のお題が【文学トリマー】で。裏のお題が【山岳カルマ】ということだ。
むむっ。トリマーとは?カルマとは?
私は、そこからだな。
さらに、山根あきらさんの、青ブラ文学部のお題は。
『帰りたい場所』という言葉を含むタイトルにして投稿してください、ということで。
お3人の企画は両方とも、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって。お題を出すだけでも、大変だと思うのである。
それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。毎週、励みになる。
また、今回は、りみっとさんの、シロクマ文芸部作品を読んでみた。ちょっとその感想を述べてみる。
バスケットボールというスポーツは、靴裏がすぐにすり減りダメになる。なんだかわかる気がする。
靴紐の色で自分を鼓舞し。そして、仲間に安心を与える。その静かな、アイコンタクトのように交信する闘志が素敵に思う。
白と赤と黒。見事な色のバランス。
鮮やかで暖かみがあって、心が撫ぜられるような感覚のショートショート。なんだか、バスケットボール、カッコいい。私もやりたくなってしった。バスケットボールなんて、体育の授業か球技大会でしかやったことが無いのに。
でも。スポーツって、すごくいい。
生きていられることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉と、たらはかにさんの裏表のテーマ、さらには山根あきらさんのお題。4ついっぺんに書く荒技。まして、シロクマ感想文まで、5重の荒技。あまりにもやりすぎじゃないかな。
うむ。
これで何週間だろうか。まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟つぶやいた。
なんだか、悪ガキだな。
まあな。
そしてもう一度、心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟つぶやいた。
家族からのお題は、バックアップで書いたの?
うむ。少しずつね。でも、それを投稿する機会がなくなってしまったかも知れない。どうしようか。
私は実は、この荒技シリーズを、ハードボイルド風に書き上げたいと思っている。ほんとうは。
だが図らずも、コミカルな内容になってしまっている時もあり。物語の行方は、まるで山奥の清流に落ちた紅葉のように流され、渦に巻き込まれ、下流まで、河口まで海までたどり着くかどうかも怪しいものである。
今回は、また、そんな調子になってしまっているようで、実は、反省している。少しばかり。
さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「帰りたい場所」約410字を、どうぞ。
☆ ☆ ☆
白い靴を、泉はあの日履いていた。
そんなものなど何の変哲も無い。だが泉には特別だった。
事件の起きたあの日から父は忽然と姿を消した。
あれ以来、白い靴は履かなくなったのだ。
白い靴ばかり履いていた子供時代。動物が好きでトリマーになりたかった。図鑑や本もよく読み、図書館に通い詰め、文芸部に入った。
今日は久々のオフで。高尾山に登った。
全てを忘れて自分を解放する。ひたすら足を前に出した。
山頂に着き、富士山を眺めているあいだに、秘密警察に入隊した真の動機を思い起こした。期せずして。
父を探し出す。そして、悪の枢軸、テロリスト達をこの世から根絶する。
だが。
私欲を抱くことはエージェントとしては禁じ手である。よしんばその密かな思惑を実現したとしても、来世は決して明るくはないのだろうと、ふと、思い至った。
西に傾いた陽射しが眩しくて、キャップのツバを下げた。
さあ、下山の時間だ。
白い靴を履いていたあの頃は良かったなんて思いつつ、前を向いた。
☆ ☆ ☆