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ショートショート_安寧
星が降る夜空。そんな夜空を、生きている間に見てみたいと、ずっと思っている。
最近、何を調べるのにもchatGPTを使っているのだが、国内の星空の美しい場所を5つ尋ねてみると、以下のように教えてくれた。
①長野県阿智村
②沖縄県西表島
③北海道美瑛町
④鹿児島県屋久島
⑤沖縄県石垣島
ふと家内から声がかかった。どうも、2月の中旬に会社から休みをもらってH(注1)のところに行く予定を立てるようである。
当然、私など眼中に無い。家内によると、これは、母と娘の大事な時間らしい。
……。
まあ、いい。
この星降る夜空は、必ず生きているあいだに行く。そこに家内がいるかどうかは、神のみぞ知る、いや家内の意思次第というところである。
ひとりで見上げる夜空も、決して悪くは無いのである。
幸いにして悪ガキの私は、幼い頃から、閉じ込められたお仕置き場の夜空を見上げてそのことを知っている。
星降る夜。
実に楽しみである。
そんな日曜日の午後に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、木曜日に出る。
そして、今回のお題は、「春と風」から始まる、小説、詩歌、エッセイということで。
そして、たらはかにさんからのお題は…。
表のお題が【月夜の寝ぐせ】で。裏のお題が裏お題【武器屋の餌付け】|д゚)チラッということだ。
また、山根あきらさんの、青プラ文学部のお題は、少し早めに出る。
「放伐と禅譲」という言葉を、タイトルあるいは本文中に使用してください、ということで。
あきらさんのお題は、時として難熟語が出る。また、これがいい味を出しているのだが。
放伐とは、武力による政権交代のこと。そして禅譲とは有徳な人物への緩やかな政権譲渡のことである。禅譲は文字通り譲ることだから選挙は厳密には禅譲ではないのだが、民主主義における民意を受け入れて素直にそれに従うという姿勢を禅譲ということにしよう。今回は。
![](https://assets.st-note.com/img/1737862642-AaOGWm3dcD7M5pnQEzjYtXLP.jpg?width=1200)
3人の企画は両方とも、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって。お題を出すだけでも、大変だと思うのである。それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。毎週、励みになる。
また、今回は、玉三郎さんのシロクマ文芸部作品を読んでみた。ちょっとその感想を、シロクマ感想文として書いてみる。
星が本当に降ってきて。
その中に神様と思しき存在と目が合って、「神様」と呼び、「返して……」と言ったものの、星の光は消え、家に帰ると彼も消えていた。
眠りについて朝になれば夢に思いを残そう。
主人公は色んなものを失い、取り戻そうとしているように思うのだ。星と神様が結びつき、神様は何もこたえないというところが現実的で切なく。でも夢の幻想的な感覚も残していて、心に響いてくる。
「チ」、実は私も大好きで。視聴率はそれほど高くないのかも知れないがかなりの秀作だと思う。私自身は、何度も見てみたい。原作もいつか、読んでみたい。
玉三郎さんの記事に貼り付いていた、ヨルシカの「アポリア」を聴きながら思った。
玉三郎さんはそういう悲しさとか切なさを作品にしたかったが「最終的に別物」になったと書かれているが。なるほど、色んな思いが込められているのだな、と。
小説とか創作って不思議だ。書き手と読み手の間に余白や隙間があって。それを読み手が埋めて最終的に読み手の中に作品が出来上がる。
星降る夜。恋人と見上げるのもロマンチックだが。ひとり見上げる星空も、なかなかにいいものだと、私は幸いにも知っている。
生きていることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉(シロクマ文芸部)と、たらはかにさんの裏表のお題(毎週ショートショートnote)、そして山根あきらさんのお題(青ブラ文学部)、4ついっぺんに書く荒技。まして、シロクマ感想文まで、5重の荒技。あまりにもやりすぎじゃないかな。
うむ。
これで何週間だろうか。
まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟つぶやいた。
まるで、悪ガキそのものだな。
まあな。
なんのはなしですか。
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さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「安寧」約410字を、どうぞ。
☆ ☆ ☆
星が降る夜空を、あの日、泉は初めて見た。
新月の夜。息を呑む満天の星空。言葉が無かった。
長野県阿智村で、その夜から2週間以上滞在している。
秘密警察の実験場が山間の地下にあり。財前の開発した新ツールの適応パターンを試していた。
財前は平和主義者で。自らの開発したものを「武器」とは言わない。あくまでも「ツール」である。
相手を殺傷せず無抵抗にして確保する。
缶詰の任務の間にレストという休憩の時間が与えられる。大抵の場合、隊員は疲れ果てて爆睡する。
任務に戻ろうとして、暗がりのテラスに財前を見かけた。
狸の親子に食べ物を与えていた。
振り返る財前に、泉は髪を直しつつ黙礼をした。
天頂の満月が2人を照らしていた。
ほどなく総選挙で新たな政権が誕生した。
法治国家においても時に、闇が暴走することもある。
放伐と禅譲。
財前も泉も後者を望んでいる。
決めつけは御法度だが。ツールを携える者の心持ちは、常にこうであらねばならぬのだと切に思うのである。
☆ ☆ ☆
さっちゃん(注2)に、今日の荒技が終わったとソファーを振り返って話しかけると、さっちゃんは笑って言った。
そんな時間があるなら、もっとマッサー(注3)に使ってもらっていいのよ。今日は日曜日だし、倍返ししてもらおうかな。
……。
マッサーをすると家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。
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(注1)Hとは、次女のことである。マイナースポーツのアスリートを、地方の実業団チームで続けている。私にはかなりキツいが。根は、優しい子である。
(注2)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注3)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
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