八竹
八竹と書いて、「はちく」と読むという。我が家が食べたお弁当である。
家内の仕事は、外に出ていろいろなお客様とやりとりをする仕事でもあり。中にはかなりの富裕層の方々とのやりとりもある。
例えば差し入れをするとか、されるとかいうシチュエーションで、今まで聴いたことも見たことも無い高級なものを扱うこともあり。ちょっと世界が違うのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジには、垣間見たこともないような世界だよな。これぞ、レベチなんだろうな。
そんな差し入れを、時に、持って帰ってくる。
それは、差し入れられたもののお裾分けもあれば、差し入れようとしてるものの試食であったりする。
何にしても、これまで口にしたことが無いものを食べられたりするのだから、それはそれで、長女も私も、配給に預かれれば御の字なのである。
今回の配給は、新宿四谷の八竹。歴史の古い大阪鮓の専門店のようである。
家内が持って帰ってきて。
「コジくん、配給あるよ」
というので、小躍りしつつ見ると、何とも和風な美味しそうなお寿司で。
思わずガッツポーズなんかをしたりした。
すると、家内が手際よく3つのお皿に取り分ける。
まさか……半分こ……?
「今日はね、M(注1)もいるから、3分の1よ」
……。
なんのはなしですか。
そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、我が家は子供優先。3分の1個あっただけでも、マシでしょ。
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)Mとは、長女のことである。私にはかなりキツいが。根は、優しい子である。