上向き
家内にはいろいろな拘りポイントがある。
代表的なものは、ポイ活とクーポンと節約であり、他には、富士山と新幹線と限定品である。
だが、不可思議な拘りもあり、論理的に考えると、ちょっとこれは間違っているだろうということもある。そしてそれについては、できる限り丁寧に説明するのであるが、たいていの場合は納得せずに終わるのである。
その中で、食洗機に包丁を置くときに、刃を上向きに置く、というのがあった。
包丁を上向きに入れてしまうと、洗い終わったあとに食器を取り出すとき、手や指を切ってしまう危険がある。
食洗機は、真ん中にスプリンクラーのようなものがついていて。それが回転して水を噴射している。
家内と会話してみると。包丁を下向きにすると、その回転部分に触れて食洗機が傷つくかも知れないというのが家内の心配事ではあった。
だが、たぶんきちんと置けば触れないだろうということで、私は説明したのだが、ちょっと釈然としていないような感じだった。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
さっちゃん(注1)は、なんだか、納得していないのかなぁ。
この際、一度私が、手そ切ってみようかな。
なんのはなしですか。
そうこうしているうちに、さっちゃんは、包丁を下向きに入れるようになった。
よかった。
そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、マッサーしようか。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
いえ。結構です。後が怖いから……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。