部品

パソコン操作に長けた人からすると、本来、マウスを使うのは邪道だそうだ。

ショートカットキーを駆使して操作をすると、徹底してスピードアップが図れ、効率化を突き詰められるらしい。

だが。私は、どうしてもマウスを使ってしまう。

というのは、ショートカットキーを覚えておらず。それに熟練するほどの訓練を突き詰める根性が無いのである。

対して家内は、からっきし、パソコン操作に疎い。マウスすら使わない。

せめてマウスを使って少しは操作性を上げたらとアドバイスして、買って渡しはしたが、一向に使わない。そして、パソコンをぞんざいに扱う。

そしてついに先日、こんなことを言った。

コジくん、なんか、変な部品がソファーに落ちてる。

落ちている部品を拾い集めると……

私は、見た瞬間、ワイヤレスマウスの受信機だと判別できた。

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟つぶやいた。

マウスよ、さらば……。

私は、かなりきつく叱責した。日頃からぞんざいにパソコンを扱っていることを含め、もう少し丁寧に扱いなさい、無駄をしているのはむしろ貴方だ、くらいの勢いで言った。

が。言ってすぐに後悔したが、それは先には立たなかった。

そんなこんなを語らおうとして恐る恐るソファーを振り向くと、家内が妙な笑い方をしつつ言った。

コジくん、傷ついたよ……。

私は、即座に腰を上げ、ミッションに就いた。今宵は、丁寧に。そして、長く。そう、心に誓った。

マッサージをすると、家内は上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は平和である。





だから。





これで、いいのだ。