許可
8月末で定年退職を迎えた私は、定年までに年休消化をしようと、今年の夏休みは、人に言えないほど、たんまりとった。
そして、家内に言ったのだ。
「ちょっと遠出でもしようか。旅行、企画してよ」
家内は、なぜだか、生返事だった。
よく考えれば、それもそのはず。プロジェクトに参加してからというもの、持ち帰りの仕事や休日の仕事、超早朝からの仕事などがかなりあり。
夏休みは、ヘトヘトで迎えたのである。
夏休みの直前、家内に、敢えて聞いてみた。
「旅行の計画、立てた?」
すると家内が、満面の笑みで、応えた。
「コジくん、どこかに行きたければ、遠慮無く、自由に行ってきていいよ。マッサージはその間、放っておいていいから」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
なんかの、解放宣言だな。
なんのはなしです解。
自由行動の許可が出たところで。よくよく考えれば、私も残業三昧小僧と化しており。
「休み」は、休むに限るという結論に、即座に達した。
夏休みは、毎日欠かさずマッサージをした。もちろん、どこにも旅行などせず。遠出して、新宿。
通勤路の半分も出かけていない。
夏休みのそんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、お金と時間があればねぇ。旅行番組でも録画で見ながら、浸ろうか。旅行気分に。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
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