共犯
長男は、頑固だがあまり感情を外に出さない男である。そして、あまり人に慮りを見せるほうでもない。
そんな男が、夏だったか、たまたま我が家に帰宅してきたときに、家内と私に近づいてきて。
ハーゲンダッツを少し分けてあげるから、一緒に食べようと言うのである。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
なんだか怪しいね……。
そうは思ったが、家内も私も、ご相伴に預かった。
ところが、それから何日かしてから、事件が起きたのである。
帰宅してきて風呂から上がった長女が、血相を変えて飛んできた。
「私のハーゲンダッツを食べたなぁ!楽しみにしてたのにぃ!」
長男は、ことさらにハーゲンダッツが好きで。しかも、ファミリーサイズを独り占めして食べ切るのである。
我が家の冷凍庫にもいくつかストックしてあったりして。
だから、いつも、独り占めするはずなのに、おかしいと思ったのだ。長男が自ら分けてあげると近づいてきたときに。
すぐに長男が一緒に食べようと言ってきたということ。主犯は長男だと告げると、長女はすぐに長男に抗議のLINEを入れた。
すると、こう、返信があった。
「俺も食べた。共犯というか、主犯はふたりいるけれど、な」
なんのはなしですか。
そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、悪ガキの血は、確実に遺伝してる。
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。