塩パン
家内が池袋駅で、ちょっと気になっていたパン屋さんを見つけたのである。
そこには、美味しい塩パンがあるのだという。
塩パンと聞いて、俄にはその味をイメージすることができなかったが、要するに、ちょっと塩がきいていて絶妙に美味しいパン、ということなのだろう。
そうも思い、そこでパンを買おうと店に入った。
すると。
あれもこれもこれもあれも、美味しそうに見えて。買いすぎて、結構な有料手提げ袋がおまけでついてくるほどだった。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
ちょっと調子に乗りすぎたかな。
帰宅して、報告し、家内に叱られた。
塩パンだけで良いのに買い過ぎだということを散々聞かされた挙げ句、見境なく欲しいものを買ってしまうその神経が身を滅ぼすよと、とどめの言葉を掛けられて締めくくられた。
ちょっと反省しようとしている悪ガキを、コテンパンのパンにしてしまうのが、家内のやり口である。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
いや。こりゃ、コジが悪い。
……。
そんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、そういや、あの時いくら買ったの?
え?5,000円くらいかな?
家内の顔色が変わる。余計なことを言ってしまったか……。
じゃあ、5時間ね。マッサージ。
えっ、なんのはなしです加っ!
日曜日の朝などに、迂闊にこんな状況に陥ると、本当に5クール(注1)やる羽目になる。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)我が家のマッサージは、家内が録画したドラマやバラエティ番組を見ながら行うことが基本なのである。1クールとは、ドラマ一本分。つまり、1時間、ハーフとは30分。クゥォーターとは15分を、意味する。