短話 「KYOMU」
あいつは俺が独りになると急に襲ってくる。
なんでだ、今日は充実した日を過ごしたではないか。
カフェでコーヒーを飲みながら読みたかった本を読んだ。
何分も悩んで、奮発して高い靴も買った、結局幸福感を得た。
どこにもお前の出てくる所はなかろう。
寂しくなるから引っ込んどいてくれ。
そう言っても、あいつはこっちを見て笑っている。
あいつが来ると、自分という存在はこれまで何を残してきたのか。
もしかして温室効果ガスを排出するだけの物体なのではないのか。
人と一緒に居る時には考えもしないことを考えてしまう。
これからも精一杯生きていこうとしている俺の邪魔をしないでくれ。
これまで努力してきた時間を『無駄』と言わないでくれ。
あれ、doryoku?俺は本当にどりょくしてきたのだろうか。
全てにおいて、ドリョクしきれたことはなかったかもしれない。
あいつはいつもそういう隙間から、目を細めて、こちらを見ている。
サポートまでしてくれるなんて、精進していきます。