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能登半島地震 病院支援の記録

※詳しくは2024年1月10日にupされたNラジでお話ししています。


突然の応援要請


元日に発生した震災の後、自分に今すぐできそうなことなんて何も思いつかなかった私は、寄付や募金をするか、DMATや災害支援チームとして参加している友人たちの無事を祈るくらいしかできないなぁ…と考えていました。

そんな折、突然元同僚の医師から「今もオペ看できますか?」とSNSでメッセージが届きます。

この方は、私が過去に救命センターで勤務していた頃一緒に仕事してた救命医で、今は関西の総合病院救急科の部長と救命センター長を兼務しながら、特定非営利法人の災害支援チームを主催されている方です。

曰く、 石川県の「七尾市」という場所に、今回の地震発生後に石川県の北部で唯一手術ができる(被災後も安全に手術ができる)機能を保っている病院があり、その病院では手術件数が大幅に増えているため手術室看護師が不足しているとのこと。

そこで、たとえ数日でも良いので現地入りしてオペチームに加わって欲しいと、私のところに依頼がきたわけです。

手術室看護師として被災地へ


「まだオペ看できますか?」という質問に、正直なところ躊躇しました。
なぜなら私はもう、病院を辞めて3年〜4年近く経っており、 その間一度も手術に入っていなければ、そもそも病院のユニホームに袖を通してすらいません。

そんな私が(おそらく緊急オペのオンパレードであろう)被災地の手術室に入って果たして役に立つのか?という迷いや不安が浮かばないわけがありません。

ただ、もともとオペ室で長く働いてきた私は「現地のオペ看が足りていない」という文言に、どうしても心が持っていかれてしまいました。
そして思わず「動けます。」と返事をしました。

ごちゃごちゃ頭で考えてしまうと動けなくなりそうだったので、「不安要素や現地入りするために必要なことは後から考えよう。」そんなふうに考えていました。

「無闇に現地に行くな」という声を振り切って

年始早々の仕事のスケジュールを調整して被災地入りするための日程を確保した後、NバクのTwitterを使い「情報求む!」というツイートをし、被災地ボランティアや災害支援に詳しい方に向けて「何を持っていけばいいか、いろいろ教えてください!」という類の質問をしました。

同時に、身近な家族や友人に被災地入りする旨を直接連絡しました。

たくさんの方から有益な情報をいただき心配の声や激励の声も頂戴し、とても有り難かったのですが、その一方で…

いろんな方から「今は現地に行くべきではない」という声も届きました。

論調としては、
・何を持っていけばいいかわからない素人は現地入りすべきではない
・全てを自己完結できないような人材は邪魔なだけ
・今石川県が支援を求めていないのだから個人の感情で動くのは愚か

こういう批判的な声が、 家族や友人・SNSのフォロワーさんからどんどん届きます。
ただそんな中で、現地の医師からは 「本当に助かります、今医療にあたっているスタッフも被災者なので、彼らが少しでも休める環境を作りたいです。」というメールが届きます。

要するに、被災者以外の人たちからは「今は行くな、邪魔になるだけ!」という言葉が届き、被災地の医療従事者の方々からは"明確なSOS"が届くわけです。これらに同時に対応しながら準備を進め、被災地に向かいました。

被災地の病院でオペチームの一員に

現地に到着してからは、 震災で負傷された患者さんの外傷手術の対応にあたりました。上腕骨骨折や大腿骨骨折など、重症な骨折の方は緊急手術や準急手術の適応になるため、これら整形外科領域の手術が主でした。

オペナースという人種は、良くも悪くも「ガウンを着て手袋を履くまでの所作」「器械台をどう作り始めるか」「そもそも器械や必要物品の名前や用途を知っているか」くらいの段階で戦闘能力があらわになってしまいます。(だいぶ序盤の準備段階で実力がバレます)

運良く、オペが始まる前に「大丈夫そうだね」と言う判断になり、無事器械出しとしてオペに加わらせていただくことになりました。

偏った情報に惑わされないで

今世の中では、
⚫︎落ち着いてからボランティアにいけばいい
⚫︎今このタイミングで現地入りする人って人気取りでしょ?
⚫︎ 個人でボランティアに入ったり物資を運ぶ人は浅はか
⚫︎寄付や募金をする人こそ冷静で正しい

という主張で溢れかえっています。

しかしながら、実際に現地に入ってみて思うのは、これはかなり偏った情報だということです。
むしろ、現地の実態を何も知らない人が安全な場所から発信している情報に過ぎないとすら思います。

そんな不確かな情報を、ある程度フォロワーがいるようなアカウントがこぞって発信していることが、残念で残念でなりません。

Nバクのところに批判が届くのは全く問題ありませんが、この不確かな情報を鵜呑みにした人が「今ボランティアに行く奴は自己顕示欲の強いアホだ!」と主張したり、物資を運ぼうとする人を止めたり、否定したりすることは、人や物資が足りていない被災地の人たちにしてみたらマイナスでしかありません。

現実はどうかというと、「明日からオペ看としてきてほしい!」と、明確に人員を求めている病院もあれば 、「避難所の水や食べ物が全然入ってこない」「いつもの災害と何かが違う」「人がこない、物資がこない、なんでだ?!」とパニックになっている避難所もあるわけです。

そんな切羽詰まった依頼を受けて個人的に動く人材もいれば、チームもあるんだということを、ぜひ知っておいてほしいと思います。

ただこれも、Nバクが見た景色を元にした、Nバク視点・視座からの情報なので、テレビの情報やSNSの情報を総合的に判断し、みなさん自身の意見や考えを持っていただければ幸いです。

Nバク


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