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高橋克彦作品紹介(「ドールズ」シリーズ)

 高橋克彦氏の作品は、映像化が難しいという印象があります。

 全く映像化されていないわけではなく、私は主にテレビドラマとして映像化されたものをいくつか見たことがあります。
 見て思ったのは、テレビドラマに求められるある種の刺激的要素(特に、原作には全く無い要素)が脚色として加えられている点への、感心と違和感です。まあ、それは高橋克彦氏の作品に限ったことではないのでしょうけれど。

 高橋克彦作品の中で、最も映像化が難しい、むしろ不可能、アニメーションなら可能性はあるかもしれない、と私が思うのが、「ドールズ」シリーズです。

 舞台は現代日本。盛岡に暮らす七歳の少女・月岡怜が交通事故に遭い、不可解な症状に見舞われます。入院先には怜の父の友人が勤めており、症状について詳しく説明してくれます。

「ドールズ」未読の方はご注意ください。この先、少しだけネタバレがあります。


 一見、非常に科学的に進む状況説明なのですが、やがて明らかになるのは怜の身に甦った別人の魂の存在です。

 この別人がなんと、江戸時代の人形師。酒も煙草も好きで、江戸っ子のべらんめえ口調で語るおじさんです。
 おじさんだけど、実際に語る口は怜のもの。七歳の少女の口からこぼれるおじさんの江戸弁……何回読んでも、私の脳内で再生される声がおじさんにすり替わってしまうくらいの江戸言葉です。

 声はあどけない子供のまま、人生の酸いも甘いも知った男性の渋みを醸し出す。そんな芝居の脳内再生にチャレンジしつつ、「ドールズ」で科学的に語られる怪奇に、私はこの上ない読書の楽しみを感じるのです。

 とにかく。
 やっぱり高橋克彦作品は面白いです。

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