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シソになったかもしれない父

先週、父の一周忌を終えた。
「故人が亡くなられて初めての一年を過ごされた自分を労ってください」
という住職さんの言葉が、今更じわじわ染みてくる。


法要後に親戚一同でごはんを食べているとき
「シソ(大葉)」の話になった。
農学の研究者だった父には
「シソ」にまつわるこんな持ちネタがあった。

「シソは本来、虫に食べられやすい。
ところが、市販のシソは虫食いなくきれいなまま。
ということは、かなりの量の農薬を使っている。
しかもシソはそれをため込むから、
売っているきれいなシソは農薬まみれなので食べない方がいい。」

ご飯を食べながら、そこにいる大人全員が
もれなくこの話を聞かされていたことがわかった。
父の従兄弟のおじちゃん夫婦にいたっては、
父の力説のせいで
さしみに付いたシソの葉を食べられなくなったとか。
みんな、シソで脅されてるね〜と笑った。


私はと言うと、薬味大好きで
特に夏はシソとミョウガとすりごまをセットで
豆腐や味噌汁やサラダに入れまくっている。
そんなんだから、シソを栽培しようと思ったこともあったが、
やはり父にネタを披露され
故にシソは自家栽培した方がいいぞと言われたものの、
まんまと虫が付き、満足に食べられずに終わった。
「うまくて安全なシソはどう育てたらいいのか」
肝心のその点は、教えてもらっていない。
科学者なのに、無闇に怖がらせるだけ怖がらせ、
亡くなってしまった。


ところが、今夏、うちの家の庭に、
突如めちゃくちゃ立派なシソの葉が
自生した。
葉も大きければ、虫食い跡がほとんどない。
薬味好きの私としては願ったり叶ったりだ。

これまでも生えてきたことはあるが
どうしても虫に食われ穴だらけだったのに
「今年はなんでこんな立派なやつが爆誕したんだろう。」
と思った瞬間


「あれ、このシソ、お父さん?」

と、よぎる。
シソって紫蘇って書くしな。
蘇るって入ってるしな。
というか、それなら死蘇?
なんだ、このオカルト感強めの字面は。


とにもかくにも
初盆に父が自らシソになって還ってきた
ってなんか最高に面白くないだろうか。


今年の夏は、たっぷりシソをいただこうと思います。
シソ弔い。
暑いね。

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