昭和元禄落語心中(マンガ)読みました
約10年ぶりに読み返しました。やっぱり面白くて、切なくて、美しい!その世界に引き込まれるせいか、次の巻を読むのが憂鬱になります‥。元気な時じゃないと読めない。
10巻は八雲があの世で助六とみよ吉に会う話になって、なんだこれって一瞬思いますが、これまで落語をやるのが楽しいという人を苦虫をかみつぶしたような顔で見ていた八雲が、最後に楽しそうな顔で落語をするのを見れて良かったなと。
それにしても、小夏→八雲、菊比古→助六に対する気持ちが鏡のようですね。助六が四国へ行くときに菊比古が思ったこと、晩年の小夏が語った八雲への気持ちは、両方とも可愛さあまって憎さ百倍のむくわれない恋心じゃないでしょうか。そして最後の別れの前の「そんな顔するんじゃない」ってところもそっくりです。
助六と八雲の芸の立ち位置は、ちょっとガラスの仮面のマヤと亜弓さんに似ていますね。野生児のマヤの方が実は天才なんだけど、本人は亜弓さんの方が色々恵まれていいなと思っている。亜弓さんは、周りからは羨ましがられているけど、実は血がにじむような努力をしていて、マヤの本能的な才能に気が付いて嫉妬するという‥。
落語の部分はそれだけで話としておもしろいうえに、小道具としてもいいですね。特に「芝浜」の「お前がいなけりゃこんな風になれなかった。感謝してるよ」というセリフは登場人物の心情とリンクしていて、毎回、泣いてしまいます。もちろん「死神」「野ざらし」「居残り」などは、クラシックの主題のように何度もでてくるし、「寿限無」は、おっ、ここでやるのかとなるし。きっとまだ気が付いていない仕掛けがあるんだろうな。粋じゃないって分かってますけど、心情・伏線ぜんぶ解説します本をつくってほしいです!