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先輩の命日に寄せて

2週間ほど前、中学時代の先輩の命日に泣きながら書いた日記


日付が変わった。4年前の同じ日、中学の頃の部活の先輩が交通事故で亡くなった。優しくて、いつも心配そうな顔をしている人だった。その学年は部員が先輩一人しかいなかったこともあって、彼女はよく後輩たちに話しかけてくれていた。人と関わるのが下手で逃げてばかりの私のことも、いつも心配してくれていた。でもその頃の私は本当にひねくれていて、いつも弱々しい調子で「大丈夫?」と聞いてくる先輩のことをうっとうしいとかお節介だとかそんな風に思っていて(大丈夫か聞きたいのはこっちの方だ、先輩は細くて儚げでいつも自信が無さそうだった)、思い出すだけで申し訳なくて恥ずかしいけど、心なしか素っ気なく接していたことが多かったように思う。
先輩の声を今でも覚えている。私の名前を呼んでくれた。困ったように笑う綺麗な顔が忘れられない。ずっと嫌な子でごめんなさい。素直になれなくてごめんなさい。私はあんまり大丈夫じゃないです。いつも気にかけてくれてありがとう。何を今さら。私は自信なさげに部員たちに指示を出したり同級生がいないからかいつも寂しそうな顔をしていたり、先輩のそういう姿しか知らない。放課後以外の時間には同級生とくだらない話で盛り上がったりとかそういうこともきっと普通にあったのだろうけど、部活の先輩という肩書きの上でしか接することのできなかった私には知る由もない。孤独な部長じゃなくて、一人の女子高生としての先輩の顔を見たかった。
またいつかどこかで会えたら、今度はどんな話をしようか。あの頃よりは少しだけ上手になった私の歌を聴いてもらおうか。優しかった先輩と対等に話せるような優しい人間に、私もちょっとは近づけているだろうか。あと12日もすれば私はまたひとつ大人になって、とうとう先輩よりも年上になってしまう。あの頃はあなたの方が3歳も年上だったのに。中2の頃の高2の先輩なんて、人生のことはなんでも分かってるような大人に見えた。全然そんなことはなかった。私は今でもあの頃と変わらずどうしようもない人間で、いつまでたっても21歳のままの先輩のことをこうやって思い出しては一人で泣いている。

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