ヒットを生む基礎概念-既知と未知
■誰もが「人柱」にはなりたくない
ゲーム作ったり日本で随一のゲームデザインサイト「ゲームのしくみ」を運営したりしてる新田です。
この頃はコロナ騒ぎで日本全国自粛モードで静かな臨戦態勢ですが、イタリアやアメリカは自粛解除ムードになってきており、日本でも連休明けには終わるんじゃないかと思っています。
ツイッターやネットにはいろんな予想が出たりいろんな意見が出てますが、結局はデータが示すとおりの行動をせざるを得ないと思ってます。
さて、今回の「既知と未知」ですが、非常に簡単な概念です。
しかしマクロな概念なので、知っておけば方向性は間違わないで済みます。
ヒットを作りたいとか、自分のゲームが少なからずヒットしたらいいなあとか、そういう思いがある場合は取り入れてみてください。
ヒットを作るためには「この考えから始める」くらい、大事な知識です。
結論から言うと、ヒットというのは「既知と未知の組み合わせ」であることが多いということです。
既知のゲームというのは、つまりみんながすでに知っているゲームのことを指します。
例えばRPGとか、SLGとか、シューティングゲームとかはみんな知ってるわけです。
みんな知ってるわけだから、どういうゲームなのか把握しているし、どういう面白さなのかも知っている。
だから入り込みやすい反面、新鮮味はないわけです。
ヒットには新鮮味や「新しい体験」が必要です。
新しいからこそみんな体験してみたいと思うし、どんなの? どんな面白さ? みたいに興味を持つわけです。
これはゲームに限らず、どんなエンタメでもそうです。
チームラボのアトラクションとか、ディズニーの新しいアトラクションとか、新しいゲーム機の体験とか。
新しいからこそ、今まで見たことがないからこそ「すっげ!」と思いますし、「やってみたい!」と思うわけです。
だから、なにかを作るとき、ヒット要素として「未知」の部分、新しい部分が必要なわけです。
しかし、ただ新しいだけで、どういうものなのか想像つかないものだと、入り込みにくい。
ゲームであれば、今まで見たこともない画面、やったこともない操作性、新しいルールということになると、「え? 誰かの遊んでるところ見て確かめたい」みたいになります。
自分では新しいことを試すのは怖い、慣れないことをするのは怖い、というのが人の自然な反応だからです。
だから、「既知」と「未知」なのです。
ゲームで言えば、どこかで見たことのある画面だけど、キレイだし、これまでに見たことのないような画面が展開されている。
どうやら新しいルールが取り入れられていて、新しい体験が楽しめそうだ。
慣れた操作で楽しめるようだし、ちょっとやってみようか。
という感じで、すっと新しいゲームに入ってもらえるのがベストです。
そうして、新しく刺激的なルールを楽しんで、「これはおもしれー!」となって、流行っていく。
入り口は大事だし、ゲームの新しい要素を楽しめるかということも大事です。
新しいルールはシンプルでわかりやすいもののほうが入りやすい・・・といった面白さを詰める話しはまた別の機会にしますが、とにかく、このように「既知」の入り込みやすさと「未知」の新しい刺激は、セットになっていると考えてもらったほうが、いいとこどりできます。
「既知」と「未知」の組み合わせを簡単に言えば、「進化型を作る」、ということにもなると思います。
■ゲームを進化させる
今までの慣れたルール、操作性などは残しつつ、ゲーム自体を進化させ、新しい刺激、「新しい体験」が楽しめる。
例えば、ちょっと昔「R-TYPE」というシューティングゲームがありましたが、これはシューティングゲームの代表である「グラディウス」を超えるためにはどうしたらいいか? という発想から考えられたそうです。
つまり売れているゲームの進化型を作ろうとしたわけです。
進化の方向性はそのゲーム会社の独自の解釈でしたが、「R-TYPE」は今までのシューティングゲームとは遊び方が違っていました。
シューティングゲームといえば敵の弾をかいくぐるのが普通でしたが、「R-TYPE」は敵の弾を防ぐ「フォース」という武器があり、それで敵の弾を吸収できたので、「弾をフォースで消すと安全」になり、弾を消しに行くという遊び方になりました。
つまり、「R-TYPE」はそれまでのシューティングゲームとは違った「新しいシューティングゲーム体験」を提供したのです。
「新しい体験」は独自ジャンルを形成しますから、「R-TYPE」はシューティングゲームの中で、独自の流れを形成し、長らく生き残ることに成功したのです。
■「既知」と「未知」で進化させる
このようにして、「既知」と「未知」を組み合わせて、独自ジャンルを形成し、ヒットにつながったゲームはほかにもあります。
「テトリス」から派生した「コラムス」や「ズーキーパー」などは有名ですし、3マッチパズルという新しいルールは、テトリス以上に世界に広まっています。
SLGとアクション性を組み合わせた「リアルタイムストラテジー(RTS)」は、世界のゲームトーナメントで大きな盛り上がりを見せています。これもSLGの進化系です。
スタークラフトII
対戦FPSの進化型としては、「生きられるエリアが縮まっていく」というエスカレートを生むルールが採用された「PUBG」があります。これも全世界でトーナメントが行われていて、爆発的に盛り上がっています。
PUBG
それまでのゲームをいかに進化させるか? さらにエキサイトできるゲームにするにはどうするか? 全く新しい体験を提供し、それまでの遊び方を変えるにはどうルールを組み換え、足したらいいか?
そういったことを考えつつ、ゲームを進化させれば、そこには「メガヒット」があるかもしれません。