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のぞみ
2020年1月18日 13:02
7 体内の血液が真っ白になった感覚が走った。予想外に早すぎた非日常が目の前現れたからだ。約束の時間はまだ少し先だった。強烈な印象を焼き付けるどこか虚ろな双眸は、一目で彼たる存在を私に認識させた。すらりとした体つき、顔も立派な青年らしさがある。濡れ髪が整った曲線の頬に張り付いていた。私は歩幅を小さく意識して、彼の元へと歩いた。緊張のためか、雨に濡れた寒さか、足がわなわ
2020年1月16日 20:09
4 降りしきる雨の中、傘をわすれた僕は地下鉄へ駆け込んだ。次の電車まで五分程度。乗車列に並んだ。列といっても、僕の前に一人の男性がいるだけだ。好ましい雰囲気を持ち合わせており、年齢はおそらく三十歳前後といったところ。IT企業に勤めているのだろうか。勝手に妄想を巡らせる。カーキ色のチノパンに、品質の良い麻で織り込まれた白シャツ。手入れの行き届いた真っ白のスニーカー
2020年1月13日 18:45
1 僕は座席に腰を下ろしたと同時にスニーカーを脱ぎ捨てた。山口から大阪に向かう夜行バスの中、僕は後方に座る女性を気にしていた。座席をリクライニングしたかったが、つい、姿も見えない女性に遠慮してしまい、なんとも、中途半端な気持ちで前方を眺めていた。締め切られたカーテンの隙間から、等間隔で点滅するように車内へ光が差し込んで来る。高速道路の脇にそびえる建物の近代的な光。その一方で
2019年10月8日 16:48
ーー早く卒業したい。四月はまだ少し寒さを残している。高校へ向かう通学路には、自分だけの世界が続いていた。早朝。雀の声。遠くを走る車の排気音。そして、私の足音。新しく買ったローファーはまだ足に馴染まない。首に巻いている制服のリボンは、可愛らしい首輪のように思える。これから三年間こんな気分でここを歩くことになるのだろうか。そんなことを考えながら、お気に入りのイヤホン