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エビングハウスの忘却曲線(の誤解)

(本記事は過去に別アカウントで作成した記事に加筆・修正をしたものです)


「一度見聞きしただけでその情報を100%記憶できたらいいのに」と常日頃思っている。大量の論文を漁ってそれらを引用していたのだが,引用した内容以上のことは全く覚えていないということも珍しくないものである。

記憶や忘却と言えば「エビングハウスの忘却曲線(Ebbinghaus's forgetting curve)」というものは有名であると思われる。様々な本やウェブサイトでも紹介されているため,心理学専攻ではない方でも聞いたことがあるのではないだろうか。

これに関して注意されたい点として,エビングハウスの忘却曲線について記載している文献には正確ではない記述をしているものもしばしば見られるということが挙げられる。具体的にはグラフの縦軸であり,これを「覚えている割合」や「記憶定着率」などと記載しているものが数多く見られる。しかしながら,この縦軸は厳密には「節約率」を意味するものである。

より詳しく説明すると,例のグラフは時間経過によって「どの程度の情報が記憶から失われるか」を表すものではなく,時間経過によって「その情報を再度学習する場合に時間をどの程度短縮できるか(=記憶するための時間的コストをどれだけ節約できるか)」を表すものである。ゆえに,厳密には「記憶量の変化」を表すものではないという点には注意されたい。

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