書評 - ニュータイプの時代
山口周氏の著作が面白いというのを聞きかじったので本屋で見つけたこれを買ってみた。
パーパス経営だとか、ビジョンが大事だとかそういう「最近っぽい」ビジネス系の話題が、論理と過去の研究に基づいて解説されているという印象だった。
新しい考え方を「ニュータイプ」、古い考え方を「オールドタイプ」と名付けて、それぞれ対比する形で解説している。
たとえば、
オールドタイプは「正解を見つける力」がとても大事だと考えている。昔の問題は山積していて解決方法が不足していた場合はそれでよかったが、最近は解決策は既に溢れていて、むしろ解くべき問題が足りていない。そのため、ニュータイプは「問題を探す力」がとても大事だと考えている。
これは、研究でも聞く話で、問題設定が大事で、解決策は実は他の分野の手法を持ってくるというのはよくやる。そういう意味で研究経験というのはこれから生きてきそうである。
ただ、一点だけ「サイエンスでは問題の解決が得意であるべき姿を構想することは得意ではない。リベラルアーツこそが構想力を得るためには必要」というのはどうかなと思った。
おそらく「問題の解決」という意味ではエンジニアリングが最も得意とするところで、サイエンス的なものが志向する「そもそも世界はどうなっているのか」「世界のありようを明らかにしたい」みたいなものは、むしろ解くべき問題を生み出す側だと思っている。
ということで、この「ニュータイプ」というのはアカデミアで少なくとも僕が経験した範囲の研究活動に非常に近しいところにあるなという印象を持った。