本を出したい女の話18
私はずっとポジティブな方がいいと思って生きてきた。ネガティブな気分の時もどうにかポジティブに変換できないかと考えてた。太陽と月なら太陽の方が好きだし、光と闇なら光の方が好きだった。要は陰陽の陽しか見てこなかったのだ。
彼と交際し始めて、私はひたすらに自分が持つ最大の愛を彼に届けていた。しかし、彼は受け取ってくれないのだ。私が彼を褒めても愛情を言葉で伝えても、俺なんてとかそんな大した人じゃないよとか。こんなに愛してるのに伝わらないのがもどかしくて、彼からの愛も感じてはいるのに何故か不安が消えない。この人は私を本当に好きなんだろうか?いつか私の前から去るのではないだろうか?と。その不安感は私の心をどんどん枯渇させた。そうして生まれる執着や依存。私は自分と向き合うしかなかった。愛する人の隣に今後も居るために。
そう、お気付きになられただろうか。この本の第1章はまさに私がこの半年間自分に向き合って得た知見なのだ。向き合っていく中で彼なりの愛し方に気付き、私が見てこなかった陰の持つ大切さを知り、無償の愛へと辿り着いた。
私の愛し方は足し算だった。好きだから会いにいく、言葉で愛情を伝える、相手に興味を持って話を聞く。でも彼は違った。引き算の愛なのだ。
好きだから体を休めてほしい、言葉より態度で示す、相手を信じてるからあえて聞かない。など、私たちの愛し方はまるで正反対だった。そこで起こる不調和。お互い自分たちの愛し方では互いを幸せにできないのではないかと脳裏に別れがよぎる。それでも、合わないなら次に行けばいいと思ってた過去の私では理解できないほど、心がこの人がいいと叫んでいた。
どんどん合わなくなっていく歯車。大袈裟ではなく、あの頃の精神状態はズタボロだった。のたうち回るほど辛かった。身を引き裂かれるのではないかと思うほど心が痛んだ。その中で、私は自分と向き合うしかこの地獄から抜ける方法はなかったのだ。
自分の過去に向き合い、気付き、手放し、癒した時、私は自分自身が持つ陰陽両方を受け入れられるようになった。ネガティブな気分も私の感情。苦手も弱さも私の魅力。コインの裏表に良い悪いが無いように、自分自身のポジティブもネガティブも良い悪いはないのだ。そこを受け入れられていなかったから自身の不足感を彼に満たしてほしいと思ってしまっていたことに気が付いた。
自分を信じてなかったから彼からの愛を信じられなかったことにも、彼の愛が引き算だったことにも、彼がまるで私の写鏡だったことにもその時ようやく気付いたのだ。私も彼の愛を受け取っていなかった。自信のなさから要らぬ謙遜をしたり、嫌われたくなくて本当の自分を見せずに相手に気を遣ったり。どんな彼も受け入れるのにと思う前にまずはどんな自分も受け入れる必要があった。そして自分の心を自分で満たし切った時、ただ傍に居てくれたらいいと、もはや彼が幸せに生きてくれていたらそれで良いという穏やかな感情が生まれた。きっとこれが無償の愛なのではないだろうか。
私がこの本の中で【まずは自分】と何度も言ってるのは身をもって自分を満たすことの大切さを知ったから。穴が空いてるコップに水を注ぎ続けても流れ出ていくばかりなのだ。あなたが愛する人に出会った時、どうかその愛を溢さないように自分で自分のコップの穴を塞いでほしい。そしてあなたのコップを自分への愛で満たしてから、その溢れ出た愛をお相手に注いでほしい。それが2人で幸せになるとっておきの秘訣だ。