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ごくごく平凡などこにでもいる学生が劇団ノーミーツを観た話

たぶん、私、今、この2か月の中で、一番、どきどきしてる。

お気に入りのロルバーンのノートの片隅に、そう走り書きをした。

いくつかあるTwitterアカウントのひとつ。お気に入りだけを詰めた宝箱のようなそれに、先週の土曜日とあるツイートが載った。それが劇団ノーミーツとの出会いだった。個人的に好きで一方的にフォローしている、ユニークな歌人さん。「フォロワーひとりひとりにおすすめだよって言って回りたい。」と書いてあったそれを何気なく、タップして予告編を観た。

チケット販売のリンクに飛んだら、残念。チケットは買えなかった。どんな話だったんだろう、と、「もし、この生活が4年続いたら」という予告編の最初の言葉の先を想像した。

4日前。2020年5月27日。

突然私の宝箱に、もう一度、劇団ノーミーツの文字が飛び込んできた。

迷わずチケットを買った。

Gmailの「チケットを購入しました」のメールにスターを付けた。

左側には何度も再生される公演前の注意動画。右側には少しづつ人が増えて流れが加速するチャットルーム。

演劇は2回しか(しかもそのうち1回はコントだ)行ったことがないのに、そのコメントは開演前のざわめきに変わり、流れ続ける音楽は、私の部屋を緩やかに、しかし確かに劇場へと変化させた。

現れたたのは平凡で、全然普通じゃない大学生活。

現在大学3年生の私は声を大にして言いたい。

これ!!!!なんてリアルな大学生だ!!!!

環境は全然違う。「4年間ずっと外に出られずこのままの世界」なのに。圧倒的なリアル感。

メインキャストのみなさんはもちろん、アンサンブルの皆さんのキャラクターの濃さ、お部屋の様子。どれ一つとってもリアル感と異常感が絶妙なバランスで共存しているように感じた。

それは、もう一つの私たちが体験したかもしれない未来のようだった。

セリフひとつひとつ、キャラクターの気持ち、いろんなものがが全部、この二月の間、自分が感じていたことにヒットしていく感覚。

今の私たちがいる状況がすでにSFのような世界で、その「バーチャルでリアル」の感覚が的確に表現されていた。「今しか観れない」演劇の特性をバーチャルなのにめちゃくちゃ感じた。今私がここにいて、その私が観る今しか観れない演劇がネットワークを通じて届くこと、その演劇がまた同じ時間軸でネットワークを通じて行われていること。そのすべてが、あの劇中に起きている「バーチャルでリアル」と全く同じ「バーチャルでリアル」という特別性を観ていて感じた。

夢中で見ていたせいでパソコンの横にたまたま置いてあった就活用ノートにボールペンで自分の感動を書き込みながら見てしまった。(紙面をほとんど見ずに書いたせいで、あとから見返してもわからないものが多い)

その書き込みの中で一つ、劇中で個人的に一番刺さったセリフがある。

「人も思い出も触れないとわからない」

中盤のケンジのセリフである。(ノートの走り書きなので若干違うかもしれない。こういったニュアンス、メッセージのものだった)

ああ、そうだ。バーチャルはどんなに便利でも触れられない。このバーチャルがリアルという保証はどこにもない。

「外に出たい」という欲求は、それがすべてじゃないのだ、と気づかされた瞬間だった。

役名も、お部屋のセットも、画面の切り替えも、丁寧でアイデアがみっちり詰まっていた。細かいところに作り手のこだわりがいっぱいいっぱい詰まった劇だった。個人的に劇、でありながらzoomの画面を最大限共有して映画の効果に近いものを生み出していることにとても感動した。開演前の挨拶も、幕間もすべて必要なものとして演劇に組み込まれていることもすごかった。特に開演前と幕間は、チャットのコメントを拾うことで劇が始まってない(止まっている)状態をキープして観客とコミュニケーションをとりつつ、学長というキャラクターが劇の一部として存在する、その共存した状態が面白かった。

スタートから終わりまで、すべての工夫に、関わっている人の熱意が見えるようだった。

コロナによってここ二月ずっと家に引きこもっていた。頑張ろうと意気込んでいた大学の新歓も、サークルのイベントも、ゼミのイベントもなくなった。寝て起きての単調な毎日。

今の自分の生活に段々と面白みを感じなくなった。

だから、これを観終わったとき、すごく悔しくなった。

「門外不出モラトリアム」は楽しかった。面白かった。感動した。観終わった後すごく充足感があって、明日が楽しくなると根拠もなく思えた。

それと同じくらい、悔しかった。

なんてかっこいい人たちなんだ。

コロナだから。自粛だから。じゃなくて。コロナでも。自粛でも。

誰かをワクワクさせて。感動させて。明日がハッピーだと思える勇気が出るものを作れる。そう、学んだ。

そして、私もそんな、熱量があって、ワクワクするものが作りたい、と痛切に感じた140分だった。

劇団ノーミーツの皆さんの、「門外不出モラトリアム」に向けるその真っ直ぐな熱量に、一番感動した140分だった。

きっと「門外不出モラトリアム」を観た中で、私のような、どこにでもいる大学生はきっとたくさんいて、彼らは私と同じように、悔しくて、感動して、勇気をもらったと思う。大学生じゃない人も、あの劇を観た人がみんな、そう思ったはずだ。

私はまだまだ、かっこいい人たちになるべくもない、ただの普通の大学生だが、目標を一つ一つクリアして、こんなかっこいい人になるべく、コロナの現状に負けず精進しよう。

最後に、劇団ノーミーツさま

この二月の中で一番の、とびっきりの、ワクワクと感動と悔しさと勇気を、ありがとうございました!!!!

(1週間後までグッズ販売してるそうなので、もしこれを読んで、観てなくて、気になった方はパンフレットを買ってみてください。パンフレット単体でもめちゃくちゃ面白いです。データは800円でした。)

(これは全くの余談ですが”ノーミーツ”が「no meet」で「NO密」で「濃密」ということに開園直前で気づき大笑いしました。こういう言葉遊び一つでも面白い!と思える仕掛けがあるの、出会った人をことごとく幸せにする感じがしてとても好きです)

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