札幌銭湯スタンプラリー2024のこと(その25・川沿湯)
2024年9月21日、川沿湯さんへ。
札幌銭湯スタンプラリー2024の25軒目。
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正直に告白しなくてはならない。書くことがない。
とかやりかけたが、魂は売れない。
なんだよ「ちと」って。面白いと思ってんのかハゲ。
書くことがない。
いや、川沿湯に特筆すべきところがないわけではない。川沿湯は素晴らしい。
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…半分だけ嘘をついた。川沿湯に特筆すべきところはない。しかし、だから、川沿湯は素晴らしい。
特筆すべきところのある銭湯なんて、洒落臭いだけだろう。銭湯は日常で、凡庸であるべきだ。
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「♪ここはお風呂の遊園地〜 何てったって宇宙一〜」
北海道に伝わる、わらべ唄である。サンパレスというレジャー施設について歌っているという説が有力だ。
ことわっておくが、サンパレスを腐すつもりはない。
腐すつもりはないが、サンパレスが日常かというと、絶対に違う。
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サンパレスは自ら「お風呂の遊園地」と称している。遊園地は、まさに非日常だ。
対して、銭湯は遊園地でない。せいぜい、公園だろう。
錆びたブランコと、そもそものバランスが狂っているシーソーと、汚すぎる便所。鉄棒後に手の匂いを嗅いで「鉄臭ぇっ!」とかな。
ミッキーこそいないが、日常においては十分に楽しい。
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サンパレスは自ら「宇宙一」と称している。宇宙一なんて、日常であるはずがない。フリーザかよ。
対して、銭湯は宇宙一でない。せいぜい、地区大会4位だろう。
公立校だけど練習に練習を重ね、受験勉強も頑張り、たどり着いた準決勝。明らかに1.5軍の私立校にボコられるが、君たちは立派だ。
繰り返すが、サンパレスを腐すつもりはない。
ただ、仕事帰りにお邪魔して、疲れや鬱憤を洗い流すのはサンパレスでない。銭湯だ。
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カニやらコーンやらバターやらが乗ったラーメンより、ナルトやらメンマやら薄いチャーシューやらが乗ったラーメンのほうが愛おしい。
ピンドンのシャンパンタワーより、いいちこソーダのほうが愛おしい。
銭湯とはつまり、そういうことだ。
日常と凡庸の尊さよ。
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書くことがないなりに搾り出そう。
その日の川沿湯はとにかく混んでいた。俺の銭湯史上、最高の密度だった。
「土曜日だぞコラ!サンパレスとか行けよ!」
と思ったが、人々は意外にも、いや当然に、住宅街に佇む中華屋のラーメンを、角打ちで供されるいいちこソーダを、銭湯を、欲しているのかもしれない。
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銭湯は日常で、凡庸であるべきだ。
日本中、どこの銭湯も湯は熱く深く広く、常連たちが
「大谷ってのはすごいねぇ」
と、ドジャースよりも大洋ホエールズといった面で語り合っていなくてはならない。
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帰り道、チャリをかっ飛ばす。寒い。
夏に始まったスタンプラリーだが、気がつけば完全に秋だ。
夏にもぎとったオリーブ 秋に読みあったストーリー。
誰かがそんなことを唄っていた。
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25こめ。爆発する 僕のアムール。