札幌銭湯スタンプラリー2024のこと(その22・琴似温泉)
2024年9月11日、琴似温泉さんへ。
札幌銭湯スタンプラリー2024の22軒目。
♦︎
札幌には専属のDJを抱えた銭湯が存在している。湯やサウナと共に、グッドミュージックを楽しんでもらおうという心意気だ。
「ただ有線を流してるだけだろう」
などといってはいけない。客層や雰囲気に合わせて選曲しているとしか思えない瞬間があるのだ。
♦︎
私のお気に入りはDJ Toho(From 東豊湯)だ。日や時間帯によってスタイルを変えるが、懐かしJ-POPセットのTohoは神がかっている。
DJ TSURU(From 鶴の湯)もよい。ベテランらしく、あの頃のディスコを思わせるジャンルレスなプレイ。カルストーン効果で音がよくなっていることもあって、TSURUには毎回喰らわされる。
DJ Motchy(From 望月湯)の独特なセンスも、カルト的な人気を誇っている。大ネタに頼らず、マイナーなトラックで場の雰囲気を作り上げる手腕はお見事としかいいようがない。
DJ Tsuki-mee(From 月見湯)のプレイはしばらく味わえていないが、大メジャー箱と化した湯の片隅、ラドン風呂でそのスキルを見せつけているに違いない。
♦︎
昨年のスタンプラリー以来となった琴似温泉。音楽の記憶は全くなかった。しかし、琴似温泉にも手練れのDJがいた。
DJ Kotonyが、サウナ室で黙々とプレイしていたのだ。
私がそのドアを開いたとき、室内には「らいおんハート/SMAP」が流れていた。サウナ室内には汗だく全裸おじさんが3人(俺含む)。全裸おじさん3人で聴く、らいおんハート。
君を守るため そのために生まれてきたんだ。
互いを想う3人のおじさん。
まさにMusic brings us all togetherである。
♦︎
続いてドロップされたのは「桃色吐息/高橋真梨子」だった。ずいぶんとメロウな展開である。
3人のおっさんは確かに呼吸が荒くなっていたが、その息は桃色というより茶色ないし黄色だった。私は一旦、サウナを出た。
出たのはよいが、続きが気になりすぎた。
水風呂を一瞬で切り上げ、再びフロア、もといサウナへ。
♦︎
DJ Kotonyは「桃色吐息」に続けて「嵐の素顔/工藤静香」をスピン。
SMAP、というかキムタクから桃色吐息を挟んでの工藤静香。なんというストーリー性。私はDJ Kotonyの虜になっていた。
「嵐の素顔」の次に流れたのは「Eyes to me/DREAMS COME TRUE」だった。
「嵐の素顔」から「♪あの『顔』で smile,smile,smile」である。素晴らしい。
もうスキルとかじゃない。DJ Kotonyは物語を紡いでいる。銭湯界のラリー・レヴァンである。
♦︎
フロア、もといサウナでぶち上がった私は、バーカウンター、もとい露天スペースで一息つくこととした。
音楽は素晴らしい。銭湯も素晴らしい。
音楽も銭湯も「聴く」あるいは「入る」ことでしか本質を味わえない。
その事実が、私のような理屈バカをぶん殴り、行動を促す。
御託を並べて偉そうに、と私を説く。
「書を捨てよ町へ出よう」とかいった人がいるらしい。その意味を、DJ Kotonyに教えられた。
♦︎
22こめ。こっち向いて笑って。