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「ゲーム機ビジネス成功の鍵は、面白いゲームの存在だ」の間違い
Nintendo Switch 2 の発売が公式で発表されてから、やはり以下のような論調の記事を見かけるようになりました。
ゲーム機が売れる条件は、面白いゲームの存在だ!
評論家やアナリストと言われる人たちは、開発の経験もなければ、ゲーム業界で働いた経験もないため、考え方を間違えてしまっているのです。
《Switch の売上を牽引したのは BotW》
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下 BotW)が、Switch の売上に貢献したのは確かでしょう。
しかし、因果関係を「BotW があったから Switch が売れた」とするのは間違いなのです。
なぜなら、BotW は Wii U でも発売しているからです。
それ以外にも、『マリオカート8』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』など、Wii U と Nitendo Switch の両方にあるゲームタイトルは複数あります。
「面白いゲームがあればゲーム機は売れる」というのは成立しないわけです。
◎成功体験を分析してはいけない
しかし、私たちはこの極々当たり前の間違いをしてしまうことがあります。
ヒット商品の目立つ部分に注目し、
「この商品が売れたのは ○○ をやったからだ!」
と分析してしまうのです。そして、
「うちも次の商品で ○○ をやろう!」
となってしまうわけです。
たったひとつの要素だけで商品がヒットすることはありません。娯楽商品であればなおさらです。
《成功は再現不可能、失敗は再現可能》
元も子もないような話ですが、ゲーム機のような娯楽商品が売れるには、ある程度「運」が必要です。
食料品のような必需品ではないため、世の中の需要は予測不能です。
例えば、Nintendo Switch はコロナ禍での巣ごもり需要にマッチしました。これを開発中に予測するのは不可能です。
そして、残念ながら「これをやってしまうと失敗する」という要因だけが存在するのです。
◎失敗要因1:面白いゲームがない(つまらないゲームばかり)
「面白いゲームがあれば売れる」は成立しないのですが、逆は成立してしまいます。
代表例はバーチャルボーイだと思います。
(売れなかった要因は他にもあるとは思いますが😅)
あと、古い事例としては Atari 2600 などがあると思います。
いわゆる アタリショック です。
【アタリショック】
1980 年前半、Atari 2600 へ低品質ゲームが粗製乱造され、ユーザー離れが起きてしまった現象。
◎失敗要因2:品質が悪すぎる
品質がよいからといって売れるわけではありませんが、品質が悪すぎると売れません。
代表例は、Wii U です。
「Wii U の品質が悪かった」という事象については、過去に記事で取り上げたことがあります。
あとは、Xbox 360 の「RROD(Red Ring of Death)」なども有名だと思います。
◎失敗要因3:販売不振への対応が遅れる
販売不振は、いくら対応しても回復しないこともあります。
しかし、対応を怠ると「3rd Party がゲームを作らなくなる」という現象が起き、「失敗要因1」が発生するという負のスパイラルに陥ります。
これは、この失敗要因を回避した事例になりますが、Nintendo 3DS の値下げがあります。
この対応をしていなければ、Nintendo 3DS も「失敗ハード」の仲間入りをしていたでしょう。
《ゲーム機ビジネス成功の鍵は何か?》
失敗要因は、前述の 3 つ以外にも挙げたらキリがないと思います。
しかし、成功要因を挙げろと言われても、私には思いつきません。
成功の法則はない。けど失敗の法則はある。
開発をしていた方、ゲーム業界で働いていた方は、なんとなく実感としてあるのではないでしょうか。
つまり、ゲーム機成功の鍵は、残酷なようですが以下になってしまうのです。
失敗要因を取り除く努力を怠らずに続ける。
例え、それで売れなくても事業を継続できる体力を持っておく。
そして、めげずに商品開発を続ける。
Nintendo Switch 2 が売れるか売れないかは、分かりません。
どんなに良い製品を作っても、売れないときは売れません。それがゲーム業界です。
なので、私は「任天堂が失敗要因の排除を怠っていないか」という部分に注目しています。
例え、Switch 2 が売れなかったとしても、それが「運が悪かっただけ」であれば、次があるからです。