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出生率・教育支出とPISA得点

出生率とPISA得点の相関

合計特殊出生率(出生率)とPISAの数学・科学的リテラシーとの間には負相関がある。一方、教育への公的・私的な支出(GDP比)との間には相関が認めれなかった。さらに、出生率とK12教育段階への公的支出とには正の相関(r = 0.35, p < .05)があった。

教育への公的投資と家計支出

なお、GDP比で教育の公的支出が高いのは北欧諸国で3.5〜4.7%。一方の日本はGDP比で2.48%。これはOECD加盟国の下から3番目に相当する。現在、出生率で日本を下回る韓国の公的な教育支出はスウェーデン(3.65%)に次ぐ高さで、GDPの3.47%に相当する。ただし、北欧諸国と韓国の違いは、韓国では教育への私的支出も高くてGDPの0.51%にのぼる。

教育への公的支出が高い北欧諸国は、その私的支出はOECD諸国で最も低い水準にある。言い換えれば、北欧諸国では家庭からの持ち出しによる教育支出が少なく、子どもの教育は公的な責任で行われている。これに対して韓国では、公的支出が次世代教育を支える一方で、家計支出がものをいう競争的教育への投資がかなり盛んと言える。言い換えれば、教育が市場競争のツールになっている。

日本の教育もひと昔まえまでは韓国と似ていた。ただ、現在の日本をみると韓国と反対の意味で特異な状態にある。初等教育から高等教育までのK12段階では、公的投資も家計からの私的支出もOECD諸国で最下位群にある。国内で一般的に考えられているほどに教育に投資していない。

初等〜高校教育まででみると,公的な支出も,私的な支出も,OECD諸国の最下位群にある。国内で一般に考えられているほど,教育に投資していないらしい。

ちなみに、以前に世帯家計支出の経年データで調べたときに、日本では教育及び教養支出が減少する中で、娯楽支出が伸びていた。

教育への家計支出の大きさが出生率に影響しそう

経年変化を確認しなければならないけど、OECD諸国で最下位にある韓国の出生率は、「(競争的な)教育への家計支出の多さ」にその原因を求めることができると思われる。
 韓国では、高度経済成長期後の日本の受験戦争のような学歴社会がまだ幅を利かせているらしく,ソウル市内のバスの多くに塾や学校外学習の広告がある。そして、主要な財閥系企業のほとんどが首都ソウルにあるため、就労人口はソウルとその近郊に集中し、進学競争と就職競争が加熱する悪循環。こうした側面が,韓国の少子化を加速する一因(その他にも因子はある)となっていると考えられる。
  こうした状況に対して、韓国政府は「第4次産業革命」(日本で言うところのSociety 5.0)に対応する大規模な教育改革をこの10年ほど続けている。ただし、近年になってからは、そうした大規模改革に教育産業の対応が追いつき、新たな家計支出を呼び込むイタチごっこが続いている。
  ただ、OECDなどの機関と積極的協同し、教育への公的資金の投入を積極的に続ける韓国は、この先ますます変化すると思われる。公的に設定される教育目標に向けた「公的支出」も、個人間競争を動力にする「家計支出」も多い韓国の特殊な状態からは、学びが多くある。

一方、日本は教育に公も私も投資しなくなっている

日本でもまだまだ受験を目的にした教育の議論やアプローチが続いているけど、すでに一部では「ポスト・受験戦争」の姿を呈しているのかもしれない。受験戦争と言われた時代に私的な家計支出に依存する体制を構築してきたことで、受験が「戦争」でなくなってからも、教育への公的支出は低いまま推移している。財務省は、OECD平均並みの教育投資をしているというデータを出すけど、あの程度のデータのからくりを覆せないんだから是非もなし…とも言える。受験戦争も衰退する中で、教育への家計支出が減少し、教育に「公」も「私」も投資しない社会になってきているのかもしれない。    
  それでも、PISAなどの国際調査では高い得点を示している。だから,効率的に教育ができていると楽観視することもできるかもしれない。ただ,それももっと突っ込んで分析しないと,そうと言えるか,そうと言えないかがわからない。なかなか怖い状況かもしれないけど,帰宅後の娯楽でやる分析じゃなくて,しっかりとした分析をしてみたいと思うね。・・・時間を確保しなきゃいけない

2019年のFB投稿を再録。

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