マンキュー経済学 ミクロ編 2章まとめ
第2章 経済学者らしく考える
はじめに
このnoteは、今や、世界各国に於ける何十の国々の何百もの大学のマクロ経済学の授業で用いられるようになった「マンキュー経済学」のミクロ編をまとめたものになります。
経済学の10大原理をまとめた「第1章まとめ」もあるので、まだ読まれてない方は簡単に流し読みしておくと良いです。中盤で少し出てきますので。
時間がない人向けまとめ
経済学者は、科学者の客観性をもって研究テーマに取り組む。他の科学者と同様に、仮定を置いて、単純なモデルを構築して、理解しようとする。
その単純なモデルには大別して2つ存在する。1つは財・サービス、生産要素を以て扱う「フロー循環図」と、生産要素をどう配分し、サービスの量を産み出しているかを扱う「生産可能性フロンティア」がある。
経済学はミクロ経済学とマクロ経済学に大別する事ができる。
ミクロ経済学は、市場における企業や家計の相互作用を研究し、
マクロ経済学は、経済全体に影響する要因や趨勢を研究する。
実証的な主張とは「世界がどうあるものか」についての主張である。
規範的な主張とは「世界がどうあるべきか」についての主張である。
同じ問題に対しての経済学者の意見は、しばしば対立する。
これは、価値観の相違や、実証的な理論の相違によるものである。
経済学者と科学者について
科学的な本質とは「ある事象について仮定をおき、実験によって検証する」ことである。
この本質で見るのであれば、経済学者が科学者である。という主張について違和感はなくなる。なぜならば、扱う研究テーマに違いがあるだけで、経済学者はある事象について仮定を置いて、そこに関係のない些末な事象を取り除いて簡潔なモデルを構築して実験を行うからである。
(物理学者も物体の落下時に空気の摩擦抵抗が極小である場合には、計算から除外する事が多い。それと同様。)
経済学者が扱う経済モデルとは
ここでいう簡潔なモデルとは以下の2つである。
・フロー循環図
・生産可能性フロンティア
フロー循環図とは、非常に簡潔なモデルであり、企業と家計という2種類の意思決定者しかおらず、その間を財・サービス / 生産要素が循環している図である。
家計と企業は2つの市場において関わり合う。
1つは財・サービス市場である。ここでは家計が買い手となり、財・サービスを購入する。
もう1つは生産(要素)市場である。ここれは、家計は売り手となり、生産要素を販売する。
(このフロー循環図は非常に簡潔に記載されている。本来であれば財・サービス購入時には、税金がかかり、その税金が社会の為に利用され第3の意思決定者が現れ…となっていく。)
このフロー循環図を念頭においておく事が経済学的に考える時には有益なのである。
生産可能性フロンティアとは、財を中心に生産要素がどう配分されているかを見るモデルである。
ある2つの財に絞って考える。本書の中では、コンピュータと自動車を例としている。生産要素をコンピュータの生産に振るのか、自動車の生産に振るのかで考える。実際に以下の生産可能性フロンティアを見てみよう。
扇形の外周部(点A、C)は生産要素を充分に活かす事が出来ている状態。
扇形の内側(点B)は生産要素を活かせていない状態。(非効率)
扇形の外側(点D)は実現不可能な生産状態。
点Aとから点Cに移動させるのは自動車の生産台数を減らし、その生産要素をコンピュータの生産にまわしている。これは第1章の10大原理である「人々はトレードオフに直面している」である。
また、1台の自動車生産に3台のコンピュータ生産が等価である事も分かる。これは10大原理の「あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である」といえる。
このモデルにおいて、経済的に成長するというのは、それぞれの生産台数が大きくなっていく事を指している。
この生産可能性フロンティアは、生産する財と生産要素を単純に表現したものだが、希少性、効率性、トレードオフ、機会費用、経済成長といった様々な要素を説明する事が出来る。
ミクロ経済学とマクロ経済学
これまで、企業と家計に照準を置いて経済学者の考え方に触れてきたが、ミクロ経済学はこのような特定の市場における意思決定者間の相互作用を研究する。これに対してマクロ経済学は、経済全体の影響を研究する。たとえば、政府の借り入れの変遷や、失業率の変化などに照準を置く。
実証的分析と規範的分析について
ある政策「所得税を上げる」が実施される時の事を考える。2人の経済学者AとBが以下のようなセリフを述べている。
経済学者A「最低賃金法は失業が増える原因になる。」
経済学者B「政府は最低賃金を上げるべきだよ。」
この時、上の2つの意見が分かれている事が自明だが、社会についての意見は基本的に上記のような分け方になる。
Aが述べているのは、社会がどのようになっているかの主張である。それに対して経済学者Bは、社会がどうあるべきかの主張である。
この時、Aの「どのようなものであるか」という主張を実証的な主張といい、Bの「どうあるべきか」についての規範的な主張という。
経済学者が規範的な物言いをしている時、経済学者は学者というよりも、政策アドバイザーとして話している事が多い。
なぜ経済学者の意見は一致しないのか
経済学者の意見が一致しない理由について本書では以下の2つについて触れている。
1.世界の仕組みに対する実証的諸理論が分かれていて、どれが妥当性を持つかについて意見が一致しない可能性があるから。
2.価値観が異なる為に、政策が達成すべき目標について規範的な考え方が異なっている可能性があるから。
終わりに
ここまでで2章は終了です。
経済学者の考え方の基本を学んだところで、次回からいよいよ経済行動と経済政策の原理について進みます。