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3C分析の視点で見る、ウェルビーイングマーケティングのチェックリスト17選

マイソースの谷吉です。先日「『ウェルビーイング』視点で『マーケティング』を見直してみる」という記事を公開しました。今回は「ウェルビーイングマーケティング」をよりイメージしやすくするために、自社・顧客・競合の観点に分けた17個のチェックリストを用意してみました。

また、このウェルビーイングマーケティングの概念をさらに洗練させて考える場として、2/5(水)にセミナーを開催します。詳細は末尾にありますので、ぜひご参加ください!

自社

1. 理念との整合性

  • 自社の経営理念・ビジョンは、社会や顧客に対して“どう良い影響を与えるか”を明示できているか?

  • 施策例:企業理念と事業活動の一貫性のある団体での活動や寄付。

2. 社内浸透度

  • その理念やビジョンを、社員一人ひとりが“自分ゴト”として理解し、行動につなげられる仕組みがあるか?

  • 施策例:新入社員だけでなく、管理職向けにも定期的なトレーニングを実施し、理念を実務でどう活かすか学ぶ機会を提供

3. コミュニケーションの質

  • 部門間や上下関係を越えた対話が活発で、意見を出し合える“心理的安全性”があるか?

  • 施策例:オープンスペースのオフィスデザインや社内SNSの活用、1on1ミーティングの定期実施により心理的安全性を確保/新規プロジェクトの提案制度を整え、週に1回のアイデア共有会などでトップや役員も参加し、迅速にフィードバック。

4. オープンな情報共有

  • 失敗や課題も含め、ステークホルダーに率直に伝える姿勢があるか? それが信頼につながっているか?

  • 施策例:社内Wikiや定例全社ミーティングで、売上・課題・失敗事例を共有し、社員がどこでもアクセス可能に。

5. 失敗からの学び

  • 過去の失敗事例を共有し、組織として改善・学習するプロセスを回せているか?

  • 施策例:失敗事例共有会や、プロジェクト終了後の振り返りを標準化し、次回の改善に結びつける。

6. 社会的意義の自覚

  • 自社の商品・サービスが社会全体で見たときにどんな意味を持つか、社員全員が理解しているか?

  • 施策例:社員全員に対して、自社の使命と業務内容がどのように社会の課題解決につながるかを共有する場(勉強会・社内レター)を定期的に設置。

顧客

7. 顧客視点の深さ

  • 顧客が求める価値(機能的・感情的)を、深く理解し、それを顧客にサービスとして提供できているか?

  • 施策例:定期的な顧客アンケートやインタビュー、SNS分析などを通じて、顧客が本当に求める価値をリサーチ。

8. 長期的なファンづくり

  • 購買の瞬間だけでなく、顧客に長く愛されるための“体験設計”がなされているか?

  • 施策例:会員向けイベント、購入者限定コミュニティの運営、ロイヤルティプログラム(ポイント・会員ランク)を実施。

9. ブランドの一貫性

  • ブランドのメッセージやコンセプトが、商品開発・顧客対応・社内文化まで一貫しているか?

  • 施策例:プロモーションからアフターサービスまで、ブランディングガイドラインに沿った言語・ビジュアルを徹底。

10. 顧客との共創

  • 新商品やサービス開発で、顧客の声を取り入れる仕組み(β版テストやコミュニティ運営など)があるか?

  • 施策例:β版テスト(ユーザーベータ参加)、アンバサダープログラム、オンラインフォーラムでのリクエスト収集など。

11. サービス・プロダクトの社会的インパクト

  • 使う人だけでなく、その先の環境や地域にとって良い影響をもたらしているか?

  • 施策例:商品のパッケージや公式サイトで、原材料の産地や作り手のストーリーを明示し、購買行動が社会にどう影響するかを伝える。

12. 顧客ロイヤルティの計測

  • 顧客満足度だけでなく、どの程度“ブランドを勧めたい”と思われているかを定量・定性で把握しているか?

  • 施策例:NPS(ネット・プロモーター・スコア)を導入。「このブランド(商品)を友人に勧めたいと思うか?」を定期的に調査し、施策改善の指標にする。アンケート結果を部門ごとにモニタリングし、顧客満足度やロイヤルティ向上のための重点課題を特定。

13. 変化対応力とアジリティ

  • 社会や顧客ニーズが急速に変化する中で、組織として柔軟かつ迅速に対応・改善できる仕組みがあるか?

  • 施策例:スモールスタートで新サービスを一部地域・ユーザーに提供し、エラーや課題を短期間で修正する「アジャイル開発」を実践。

他社

14. BtoBのパートナー意識

  • 法人間取引でも、相手企業の担当者の目標や評価基準に目を向け、Win-Winを志向できているか?

  • 施策例:共同目標やロードマップを設定し、定期的に進捗を確認。相手企業の評価基準やボーナス指標も視野に入れてWin-Winを模索。

15. 競合との相互的刺激

  • 競合を“奪い合う相手”と見るだけでなく、“業界を一緒に育てる仲間”としても捉えているか?過度な価格競争や誇大広告よりも、“質の高い関係づくり”を意識しているか?

  • 施策例:マーケット拡大や業界共通の課題解決で、競合と協力し合いながら相乗効果を狙う/ 他社の優れた取り組みを積極的に取り入れる姿勢を社内に推奨し、価格競争よりも価値競争を重視する風土を育てる。

16. 協業の可能性

  • 異業種や競合企業と連携することで、新しい顧客価値や社会的価値を生み出せる可能性を探っているか?

  • 施策例:異業種企業との情報交換会やハッカソンを開催し、そこから新しいサービスや製品アイデアを企画。

17. オープンイノベーションの活用

  • 異業種やスタートアップとのコラボレーションを通じて、新しい価値(顧客が求めるウェルビーイング体験)を生み出そうとしているか?/技術的・知識的リソースを開放し、相互に学び合う仕組みが構築されているか?

  • 施策例:コーポレートアクセラレーターやベンチャー投資プログラムを設け、外部リソースと自社のノウハウを掛け合わせる仕組みを整備。


事例

アサヒビール

アサヒビールのノンアルコール/低アルコール領域に強化する取り組みをウェルビーイングマーケティングの観点で捉えてみます。
参考:アサヒビール「責任ある飲酒」へ専門組織。ストロング系も新規販売終了、変わる企業の「価値」 

長期的なファンづくり=購買の瞬間だけでなく、顧客に長く愛されるための“体験設計”がなされているか?
WHO(世界保健機関)の「アルコール有害使用の低減策」や厚生労働省のガイドライン発表など、世界的にアルコール規制が強化される流れが加速しています。こうした潮流を踏まえ、「飲酒に対する正しい認識の普及」「過度な飲酒の抑制」など社会的課題への本格的な取り組みを進めています。特に自分や身近な人の健康を大切にする層にとって、“責任ある飲酒”を推進する企業は「応援したい存在」として長期的に支持されやすくなります。

変化対応力とアジリティ=社会や顧客ニーズが急速に変化する中で、組織として柔軟かつ迅速に対応・改善できる仕組みがあるか?
アルコール飲料メーカーとしての長い伝統を持ちながら、近年高まっているノンアルコール飲料・低アルコール飲料の需要をいち早くキャッチし、「スマートドリンキング(スマドリ)」を掲げました。2030年までにノンアル・低アル商品の構成比を20%以上に引き上げる目標を設定する、売り上げではなく厚生労働省のスコアにどの程度影響を与えられるかどうかをKPIとした組織「レスドリ部」を設立するなどの取り組みを強化しています。外部環境や規制動向を見据え、「今までのやり方」から速やかにシフトする決断力を示しています。

西友

西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」の取り組みをウェルビーイングマーケティングの観点で捉えてみます。
参考:発売から売上30%増を継続!生活者が商品化を決める西友のPB「みなさまのお墨付き」成功の秘訣とは? (1/3):MarkeZine(マーケジン)

理念との整合性=自社の経営理念・ビジョンは、社会や顧客に対して“どう良い影響を与えるか”を明示できているか?
西友は「Everyday Low Price(EDLP)=日常的に低価格で商品を提供する」という一貫した方針があります。その上で、「みなさまのお墨付き」は“生活者が商品化を決める”というコンセプトを採用し、低価格でも品質を妥協しない姿勢を貫いています。商品開発プロセスそのものが、「安くて良い商品を生活者目線で作る」という企業理念と合致、企業としてのビジョン(顧客第一、低価格&品質重視)とPBブランドの方向性がしっかり結びついています。

顧客との共創=顧客が求める価値(機能的・感情的)を、深く理解し、それを顧客にサービスとして提供できているか
PB商品は小売企業が独自に企画しがちですが、西友の場合は生活者の評価が一定基準を満たさなければ商品化しないという、“共創”の仕組みが存在します。人口構成に合わせた年代、地域(東名阪)で分布した、1商品の調査ごとに100名以上の方、延べ13万人が参加しています。そのまま食べると評価がしづらい商品、例えばだしの素やパン粉などの商品については、調理済みのものではなく、家庭で普段通りに調理してもらって評価をしてもらうなど、「中立公平な本音を聞き出す」ことにこだわって顧客の声を取り入れています。

Tver

TVerは、日本の主要民放テレビ局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)などが共同で運営する無料の動画配信サービスです。放送終了後のドラマやバラエティ番組などを一定期間見逃し配信し、視聴者がいつでもどこでも番組を楽しめるようにしています。

協業の可能性=異業種や競合企業と連携することで、新しい顧客価値や社会的価値を生み出せる可能性を探っているか?
もともと競合関係にあるテレビ局が、業界全体の視聴者を取り戻すためにタッグを組み、技術面でも外部企業(配信インフラや広告技術企業など)とコラボレーションしています。ネット×テレビという、ネット配信のノウハウやデータ解析技術を外部から積極的に取り入れることで、テレビ放送を進化させています。従来型の地上波CMに加え、配信広告の精緻なターゲティングを取り入れるなど、新たな広告モデルの開発が行われています。

相互的刺激=競合を“奪い合う相手”と見るだけでなく、“業界を一緒に育てる仲間”としても捉えているか?
各局は他局コンテンツのTVerで配信した番組の視聴データや反響も参考にしながら、番組制作や編成の改善を図ることができます。 それぞれが切磋琢磨し良いコンテンツづくりに注力することで、テレビ業界への関心を高めるきっかけにもなります。

最後に

皆さんの会社に当てはめるといかがでしたか?
「ウェルビーイングマーケティング」はまだまだ思考途中ですが、少しでも考えるためのヒントとなっていれば幸いです。

皆さんとこの概念を考えていく場として、対話に関する著書も出されており、武蔵野大学で「ウェルビーイング学部」の教授を務めている中村一浩教授とのセミナーも行います。

2/5(水)20:00~21:30よりオンラインで開催です。

  • 「ウェルビーイングマーケティングを実現している会社事例」

  • 「ウェルビーイングに近づくためのステップ」

などをさらに深く掘り下げていく予定です。
ご興味ある方は、以下フォームよりお申し込みください。

▼マイソースへのお問い合わせはこちら


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