【取材記事】“森と人をつなぐ脈になる”をミッションに起業! 魅力的なプロダクトが導く日本の豊かな森づくり
【お話を伺った方】
■日本の森林で今起きている切実な課題とは?
mySDG編集部:まず起業の経緯から教えてください。山本さんのご経歴を拝見して、なぜ森林分野での起業につながったのか、とても関心をひかれました。
山本さん:元々、山の多い京都で生まれ育ち、祖父が林業をしていた縁もあり自然が大好きでした。森林を事業フィールドに選んだ理由は「日本の自然環境を良くしたい」という想いからです。これまで大学時代には海外NGOで教育支援や団体でボランティアをしたり、航空会社に勤務している際も環境保全活動のボランティアに参加したり、社会課題への取り組みは関心があり、続けてきました。活動を通して知った「社会課題を解決するソーシャルビジネスの在り方」に魅力を感じていたこともあり、いつか「環境や平和に関わる社会起業家になりたい」という想いもありました。
mySDG編集部:航空会社で働いていたときから、山本さんの根底にはずっと平和や環境への関心があり続けたということですね。
山本さん:そうですね。日本の環境問題を考えた時に森林が持つ役割は非常に大きく、木を使うだけでなく、野生動物の生態系や、私たちの生活に必要な水や食べ物にも影響があるので、森林を維持管理し、産業として活用している「林業」に関心を持ちました。実際に起業する前に全国の林業生産者さんの現場を5都道府県以上訪問し、話を聞いてみると、私たちが知らない森林の課題がたくさんあることに気付かされました。
mySDG編集部:具体的にどんな課題があるのでしょうか?
山本さん:日本は国土の3分の2が森林で、他国と比較しても森林率が非常に高い国です。しかし現在(2023年)日本全国で再植林される森林の割合は約30〜40%しかなく、これが日本の森林の課題とも言われています。木を伐採した土地が植林されずに放置され、ハゲ山になる面積が毎年増えている状況です。
mySDG編集部:つまり数十年後には、緑の山が失われていくかもしれないということですよね。
山本さん:その通りです。さらに国産木材の自給率の低さも問題になっています。国産木材の自給率は約40%と言われ、半数以上は外国産材が使用されている状況です。戦後の急激な木材需要により「拡大造林政策」が政府によって打ち出され、針葉樹を中心とした植林が進みました。ですが、その後木材輸入が自由化され、外国産材が流通し始めると、国産材は成長して伐期を迎えても需要がなくなっている状況が続いています。
私たちは、国産材を利用した商品を展開するだけでなく、商品の利益の一部を持続可能な林業の支援に充てるなど、日本の森林で起きている課題を皆で解決していく循環を生み出していきたいと考えています。
■「課題解決のため」のプロダクトではない
mySDG編集部:国産材のライフスタイルブランド「MYAKU」は、どんなイメージからブランドを立ち上げられたのでしょうか?
山本さん:「森からはじまる愛おしい暮らし」をコンセプトに、商品を通して日本の木や林業生産地の魅力に触れられる人を増やしたいという想いからブランドを立ち上げました。プロダクトづくりの基本として、使い心地がよいこと、見た目が魅力的であることはもちろん、商品を通して日本の木について知るきっかけやプロダクトの背景にあるストーリーに共感してもらえることを目指しています。
課題を解決するための商品ではなく、あくまで「商品が魅力的であること」、それが「課題解決に繋がる」という順番です。「SDGsの課題解決」というタイトルから入ってしまうと、本当の魅力が伝わらないこともあると思うので、産地と消費者がヘルシーな関係性を築くことは大切にしています。
mySDG編集部:あくまで対等な関係であるという。
山本さん:そうですね。お客様と生産者のコミュニケーションを作る側として、産地と商品の魅力を丁寧にわかりやすく伝えることが、ブランドの役目だと考えています。
mySDG編集部:ブランドの第一弾アイテムとしてキャンドルを選ばれたのは、どんな背景からですか?
山本さん:ブランドのコアメッセージとして「Be a good friend to yourself and the forest」という言葉を発信しています。つまり「自分自身と森林とよき友達でいよう」という意味です。まずは自分自身が心身ともに健やかで豊かな状態でいること、その先に周りの家族や友人、自然への思いやりが生まれてくると思います。なので、まずは自分自身を癒し、心を満たす商品から作っていこうと、第一弾はキャンドルに決めました。
■こだわりしかない「天然ひのきキャンドル」の開発
mySDG編集部:ブランドの初商品となる「天然ひのきキャンドル」は、樹齢300年の木曽ひのきの精油を使用した、こだわりがつまった一品ですね。樹齢300年の「ひのき」からどのように精油を抽出されているのでしょうか?
山本さん:今回使わせていただいている精油は、ひのきの枝葉部分から抽出された精油です。ご協力いただいた生産者の吉川さんは、300年かけて育ったひのきを余すことなく使い尽くし、その魅力を人々に届けたいという想いをお持ちの方です。ひのきの枝葉を山で1つ1つ拾い集め、木の皮を剥いて蒸留して精油を抽出しています。
なおかつ今回は日本三大美林のひとつである、長野県の木曽ヒノキを使用しています。木曽には数百年に渡って代々守られている国有林もあり、伊勢神宮で1300年前から続いている20年に一度行われる御遷宮には、この木曽ヒノキが多く使われています。吉川さんは、「とても貴重な木だからこそ幹だけでなく、枝葉や葉っぱまでちゃんと使いたい」と非常に強い想いを持って、林業に携われている方なんです。
mySDG編集部:生産者さんの想いがひしひしと伝わってきますが、山本さんにとって商品の魅力として特に伝えたいポイントはどんなところですか?
山本さん:一つ目は、天然ひのきの自然な香りを楽しんでいただけることです。ヒノキの爽やかな木の香りを中心に天然由来の香りを組み合わせ、まるで森林浴しているような、深いリラックスを感じられる香りが魅力です。
二つ目は、プロダクト作りに関わった皆さんが、日本の森林や環境に対して想いを持ってアクションされている方々ばかりだということです。環境への熱い想いがしっかりとこもった商品になっています。
mySDG編集部:プロダクト作りに携わった方々は、ご自身からお声かけされたんですか?
山本さん:そうですね。2023年5月に起業してからは、毎月のように全国の林業生産者さんの現場に訪れるなどして、訪問した場所は10都道府県を超えています。精油を作る生産者さんも、商品をデザインしてくださったデザイナーさんもすべて自分で動いて見つけた方々ばかりです。とことん「この人にお願いしたい」と思える人にこだわって、なおかつ生産工程や関わった方々をすべて開示できるほど、透明性の高いものづくりを叶えています。
■開始2日でクラファン達成 森への想いを商品でつなぐ
mySDG編集部:「天然ひのきキャンドル」は、2日間でクラウドファンディングの目標金額を達成されたとのこと。多くの支持を得た理由はどこにあるとお考えですか?
山本さん:これだけ多くの方が関心を持ってくださるということは、それだけ山や森に対して関心がある方が多いということを実感しています。日本は国土の3分の2を森林が占める森林大国です。なので、幼少期のどこかで森林や山で遊んだ原体験を持たれてる方は多いんじゃないかと思います。ただ、社会課題として「環境」「林業」と言われても支援方法がわからず、どういう形で貢献したり、生活に取り入れたりしていいのかわからないというのが現実なのかなと。
それが今回プロダクトとして形にしたことで、この商品を買えば、日本の森林に貢献できるとか、暮らしの中で森林を感じられるとか、皆さんが求めるアクションに結びついたことが支持をいただけた理由かもしれません。自然を大切にしたい、感じていたいという想いと、環境問題の課題解決というものが商品を通してうまくつながったのだと思います。それは、まさに私たちがミッションに掲げる「森と人をつなぐ脈となる」を体現できたように感じています。
mySDG編集部:最後に今後の展望を教えてください。
山本さん:弊社の事業や活動を通じて日本の木や生産地を知り、「木材製品を買う時に国内の産地や生産者を軸に選ぶ人が増えること」を目指したいです。そのためには、ライフスタイルブランド「MYAKU」の商品展開を少しずつ増やしていき、生産地や扱う樹種も増やしていきたいと考えています。2024年以降、ポップアップストアや店舗販売を始め、世の中の人たちにブランドを広く伝えられるよう発信力を高めていきたいです。
また、長期的には事業として、山林の放棄地を減らし再造林率が高まる為のアクションを実行しようと思っているので、さまざまな企業様や自治体と森林に関わるプロジェクトを進めていこうと考えています。事業活動を通じて、森と人がつながるMYAKUになること、その結果、人も森も豊かになる世界の実現に向けて邁進していきます。
■ライフスタイルブランド「MYAKU」
https://store.myaku.co.jp/
■「天然ひのきキャンドル」の購入はコチラ
クラウドファンディング期間:
2023年12月4日〜2024年1月21日
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