テレワークのBGMに、存在しない言語で歌われたゲーム音楽はいかがですか。
「隣の芝は青い」という、よく使われる表現があります。誰かの有するもの、つまりは自分にないものこそよく見えてしまう、といった意味合いなのですが、これは言語においても成り立つと竹谷は考えています。
ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、バイオハザード、サイレントヒル、SIREN、ロリポップチェーンソー、ペルソナ、モンスターハンター、.hack、クロノ・トリガー、ソウルブレイダー。竹谷の心中に整理整頓されている日本発のゲームタイトルをざっと読み上げると、驚くほど英語が多いです。日本語のタイトルも念のため挙げると、十三機兵防衛圏、聖剣伝説、女神転生、ダンガンロンパ、天地創造、大貝獣物語などなど。数字なら、428です。
福沢諭吉先生も言うように、島国日本は舶来品をなんでもかっこよく見てしまう、という意見もあるようですが、19世紀の万国博覧会以降ジャポニスムがヨーロッパで猛威を揮ったり、現在マンガがMangaとして、『鬼滅の刃』が"Demon Slayer"として世界へ破竹の分布を広げていたりと、他国からすれば、日本語や日本の文化、また漢字をかっこいいと思うケースも少なくありません。important(重要、大切)という言葉が示す通り、境を越えて国内に(in)運ばれ(port)てくる、易々と手に入れられないものを、大切で価値が高いと思うのは人間の常なのでしょう。
ゲーム音楽は、音楽自体を楽しむ音ゲーは例外として、大多数においてまずボーカルが入っていません。BGMという名の通り、背景的に、ゲームプレイを盛り上げてくれるひとつの要素として用いられます。オープニングやエンディングでは、『テイルズ オブ デスティニー』の主題歌であるDEEN『夢であるように』や、『テイルズ オブ ジ アビス』はBUMP OF CHICKENの『カルマ』といった風に、ボーカル入りの楽曲が使用されることもあります。両方とも、カラオケで歌うと最高です。PlayStaionやセガサターン以降、データ容量や技術的な問題がクリアされるにつれ、歌の収録は増えていったように感じています。
オープニングやエンディングにボーカルが入っていく中、ついにBGMにも歌が入ります。2006年、アトラスより発売されたPlayStaion 2用ソフト『ペルソナ3』は、そのパイオニアであり、ゲーム音楽史に大きな影響を残したのではないでしょうか。
試聴が問題ない環境でしたら、ぜひ聴いてみてください。竹谷は一時期、朝の目覚まし用に聴いておりました。最新作の『ペルソナ5』も含め、ペルソナの楽曲は多くが英語で歌われ、最高にかっこよく、オシャレでスタイリッシュです。竹谷はアレンジアルバムを買ったり、ライブへ参加したりと、とにかく大好きです。
さて、英語、つまり母国語以外をかっこよく感じる、というのは冒頭でも少し述べましたが、ゲーム音楽はここに来てとんでもない領域へ進みます。
存在しない言語が創り上げられ、歌となり、ゲームプレイ中に流れてくるのです。「造語歌」とでも、表現すればよいでしょうか。
2010年にスクウェア・エニックスよりPlayStation 3とXbox 360用に発売された『ニーア レプリカント / ゲシュタルト』の楽曲です。もう一度述べますが、この歌われている言葉はなにひとつとして実際に存在していません。
ゲームはファンタジーや遠い未来の話など、if(もしかして)の世界を舞台にしたものが多いです。そのような別世界で話される言語は、日本語でしょうか、それとも英語でしょうか。もちろん、ゲームシステム上存在する言語でテキストが書かれているため、我々はゲームを楽しめるわけですが、それはあくまでゲームプレイのために翻訳されたものであって、キャラクターたちの住む世界で使用されている言語は、もしかしたらまったく未知のものかもしれません。ゲーム中に登場する歌が造語であることは、そういった非実在の世界に現実性を与えてくれる、筆舌ならぬ面白さを秘めた演出だと竹谷は考えます。
そのシリーズ続編として、2017年PlayStation 4用に発売された『ニーア オートマタ(NieR:Automata)』も同様に、非実在の言語で歌われています。
『パスカル』は、ゲーム中に出てくる同名のキャラクター「パスカル」をイメージした楽曲で、曲調や歌い方、流れる場面も相まって非常に印象的な楽曲のひとつです。過去開催されたライブでは、パスカルを演じた声優の悠木碧さんをして「えぐいくらいランダムな片仮名の羅列」と言わしむる歌詞で、そのような歌を構築し得たかっこよさに竹谷は感嘆を禁じえません。
時系列を少し戻すと、その後、造語で歌われる楽曲は、少ないながらも生まれ始めていきます。2013年PlayStation 3用に日本一ソフトウェアから発売された『魔女と百騎兵』は、その名の通り魔女のいるファンタジー世界で語られるゲームです。原田たけひとさんのすてきなイラストはもちろん、際立ったシナリオや佐藤天平さんの楽曲すべてが重なり合って最高のゲームなのですが、こちらも非実在の言語が用いられた楽曲が何曲が登場します。その中から『マジョ・マギ・マハト』を聴いていただきたかったのですが、Spotify、iTunes、Amazon含め試聴できるところがなく、文字だけの紹介となるのが本当に心苦しい限りです(サウンドトラックCDの価格にプレミアがつくほどの人気です)。下記の動画は公式のゲーム紹介ムービーで、『マジョ・マギ・マハト』は流れていないのですが、『魔女と百騎兵』を彩るゲーム音楽のすばらしさをご確認いただけると思います。
ひとつ知識をひけらかすと、『魔女と百騎兵』の楽曲の中には、Emi Evansさんという方の歌う『マギアージュ』があるのですが、こちらも造語です。そしてEmi Evansさんは、先に述べた『ニーア』シリーズでも同じくボーカルを務めています。竹谷の中で造語歌のボーカルと言えばEmi Evansさんが第一に浮かんできます。
さて、日本のゲームにおける造語の歌を紹介して参りましたが、海外のゲームではどうでしょうか。これは完全に竹谷のゲーマーとしての見地不足に起因しているのですが、なかなか見つけられず、かろうじてひとつ思い当たるものが出てきた次第です。
竹谷の愛する海外のゲーム制作会社にベセスダ・ソフトワークスがあります。大学時代を贄として捧げた『The Elder Scrolls IV: Oblivion(オブリビオン)』や、新卒時代を供物にした『Fallout(フォールアウト) 3』といった、中毒的と表現できるほどのゲームを世界中へ届けている会社です。やや大人向けのゲームが多いかもしれません。
日本で馴染みのある話題ですと、『バイオハザード』等を手掛けた元カプコンの三上真司さんが作った最高級ホラーゲーム『サイコブレイク』も、同社からの発売です。ベセスダ愛が溢れて本筋から逸れそうなので、ベセスダの記事は後日書くこととします。
造語の歌は、先ほど述べた『The Elder Scrolls IV: Oblivion』の続編として2011年に発売された『The Elder Scrolls V: Skyrim(スカイリム)』のメインテーマでもある『Dragonborn(Sons of Skyrim)』です。
ドラゴン語というこだわりで、サビの「ドヴァキン」が「ドラゴンボーン(竜の血族)」を指した讃歌です。つい一緒に歌いたくなる迫力ある合唱、かっこいいです。ドヴァキン!ドヴァキン!
非実在であるにもかかわらず、さらっと「ドラゴン語」というさも存在しそうな言語が出てきましたが、日本発のゲームでも、長年愛され続け、もはや存在していると言っても過言ではない「モンハン語」というものがあります。ご存知『モンスターハンター』シリーズです。
2015年にニンテンドー3DS用として発売された『モンスターハンタークロス』の楽曲『トラベルナ』です。「ネコ嬢カティ」というどこを取ってもパーフェクトなキャラクターがいるのですが、ゲーム中だと彼女が踊りながら歌ってくれます。かわいいかな。
そして続編、2017年同じくニンテンドー3DS用ゲームソフト『モンスターハンターダブルクロス』になると「ネコ嬢」は姉妹となり「カティ」と「ミルシィ」が出てきます。あなかわいいかな。
今まで『モンスターハンター』といえばお馴染みのテーマ曲『英雄の証』で硬派な印象があったのですが、『クロス』シリーズはゲームシステム含め、色々と変化がありました。
しかし、ご安心ください。『クロス』でも、『英雄の証』はあります。
いい。モンハン語の通信講座があるなら受けて検定2級くらいまで資格を取りたい。試聴では長く聴けないため変なお願いとなりますが、ぜひご購入の上 2:25 くらいを聴いていただきたいです。これがミラクル☆ミルクティの力です。
そして2018年、全世界待望の『モンスターハンター:ワールド』が発売されました。精緻なグラフィックとなり、ハイ・ファンタジーの一色となった結果かわかりませんが、ネコ嬢は続投となりませんでした。そのため、ミラクル☆ミルクティのパワフルでマイティな歌は『ワールド』では聴けずじまいとなりましたが、モンハン語の歌は連綿と受け継がれます。
ほんとうにかっこいい歌です。『ワールド』はプレイ時間の長さも相まって、なんだか泣きそうになった記憶があります。ちなみにガンランスを使っていて、途中からヘビィボウガンに変えたハンター生活でした。追加コンテンツの『アイスボーン』ではハンマーでした。重量のある得物ばかりですね。
造語の歌は造語だからこそ不可思議な「かっこよさ」や「かわいさ」の魅力がありますが、そこでもうひとつ忘れてはならないのは、2015年にWii U用ソフトとして発売されて以降、世界規模で人気を誇り続ける『スプラトゥーン』です。
「インクリング」というイカのような種族の世界で、トップアイドルとして君臨する「シオカラーズ」の歌う曲『シオカラ節』です。竹谷は『スプラトゥーン』が下手でプレイ経験も少なく、ゆえにあまり詳しくはないのが申し訳ない限りです。どなたか語ってください!
そして2020年、竹谷が「非実在の言語で歌われた歌をまとめてえなあ」と思うそもそものきっかけとなったゲーム音楽が登場します。
アトラスとヴァニラウェアによって発売された『十三機兵防衛圏』。曲名は『Brat Overflow』です。
なんとも表現の難しい、不思議で心地よい曲です。どことなく攻殻機動隊っぽさも竹谷は感じます。bratが「がき、子ども」、overflowが「溢れる」ですので「機兵に乗って戦うようなわんぱくな子どもたちがたくさんいる」という意味合いなのでしょうか。にしても本当にかっこいい曲で、何度聴いても飽きません。
こちらの『渚のバカンス(Seaside Vacation)』は造語でなく日本語なのですが、名曲中の名曲で大好きなので紹介させてください。竹谷は1985年(昭和60年)生まれで、多感な時期は平成だったのですが、この昭和を想起させる曲調に惚れ込んでしまいました。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』もそうですが、再構築された昭和の世界は、実際に昭和を過ごしてこなかったひとにも望郷めいた感情を抱かせるなにかがあるように思います。そういう意味では、2003年に発売されたPlayStaion 2用ホラーゲーム『SIREN』も、存在しない昭和78年を舞台にしているからこそ、「怖くて懐かしい」という得難い感情移入のできる稀有なゲームなのかもしれません。
話が逸れました。
ゲームプレイへの没入を果てなく追求し、結果そのゲーム世界のため、言語を創造してしまう。その情熱に、竹谷は心胆爛れるほど敬愛し、感謝の意を表します。
いやあ、ゲーム音楽って、本当にすばらしいものですね。
間違いなく、造語で歌われたゲーム楽曲はもっとたくさんあるはずです。ほかにご存知の方がおりましたら、ぜひ教えてください。語り合いましょう。
追伸:
歌ではないのですが、2000年にナムコから発売されたPlayStaion用ゲームソフト『テイルズ オブ エターニア』では「メルニクス語」が、2001年にスクウェアから発売されたPlayStaion 2用ゲームソフト『ファイナルファンタジーX』では「アルベド語」という造語が出てきます。前者は英語ベース、後者は日本語ベースで、それぞれがゲームプレイに一層面白さを与えてくれています。ワイール!ラミヨフ!
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『テイルズ オブ エターニア』のファラが初恋だったと思い出しつつ。
▽東京マンガレビュアーズさんにて漫画レビューも書いております▽
▽ミリアッシュはイラスト・ゲームイラストの制作会社です▽
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