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創作#19-2 小さな港町で朝食を<中編>

その朝ごはんがその日という1日をつくる。

そんな朝ごはんをテーマとした短編小説を書いています。

その第二話(中編)です。
それでは、どうぞ。


短編小説:小さな港町で食べる朝食<中編>

僕が運営する宿屋「ソル」はアジアの東端にある小さな港町の旅人の行き交いの場だった。大陸に渡るためには、まずは船でこの港町に訪れ、国境を超えるための通行証を手に入れる必要がある。

だから人口が70万人にも満たないこの国、この街に毎年300万を超える旅人が訪れる。多くの旅人がここに訪れ、この宿のベッドで寝て、旅立つのを子どもの頃から毎日見てきた。

父が遺したこの宿屋で、特にやりたいこともなくその日常をなんとなく過ごしていた。でもそれは悪いことではなかった。毎日流れに任せて生きてきるのも悪くないから。

そんな僕の日常に風が吹き込んできたのは、彼女が現れてからだ。多くの宿泊客が1日か、長くても3日で旅立つのに対して、彼女がこの宿に現れてからもう半年が経つ。

「お給料はいりません。夜間働かせてもらえたら宿泊料はタダにしてもらえませんか?」半年前の夜に、今日の仕事を終え自宅に帰ろうとしたその直前に、突然現れたルナの提案がそれだった。

それはちょうどいい提案だった。最近、夜に寄港する船が多くなり、深夜近くにチェックインする宿泊客が増えているからだ。だからルナには夜9時から明け方までのチェックインの受付をやってもらうことにした。

「こういう宿には慣れているから大丈夫。好きなんです、こういう雰囲気が。」と少し申し訳無さそうにルナは言っていた。

それならそれほど大変じゃないだろう。明け方までと言っても、ソルの別途は全部で8人分しかない。そのうち1つはルナが使うから、実質は7人分だ。すぐに満席となり、だいたい12時手前には受付が終わるはずだ。

9時から12時の3時間の仕事でベッドがひとつ手に入る。悪ない取引だろう。

この宿屋ソルは、ひとつの部屋にいくつかのベッドがある相部屋形式の安宿。客に提供するのは別途のみ。食事も提供しなければベッドメイキングは客自身が行ういわゆるゲストハウスと呼ばれる安宿だ。

今は男性用ドミトリー、女性用ドミトリーの2部屋しかないが、使っていない物置があるから、それを改装して男女が共用で使えるMIXドミトリーにするのもいいかもしれないと思い始めた。

おかげでベッドが満席になる毎日が続いているからだ。
おそらくその秘密は毎日食べる朝ごはんにある。

パンでかい、、、

今日の朝食は天然酵母の玄米カンパーニュ。もちもちとした食感で驚くほど美味しい。この半年、毎朝朝食をつくってくる。せめてものお礼らしい。

僕とルナが一緒に過ごすのは、この朝食の1時間だけ。
それがこの半年毎日続いている。

「こんなのよく作れるね」と、僕は感心しながら言った。
「小麦粉がダメなんです。だから米粉で自分で作るしかなくて」とルナは少し困った表情で言う。

そしてそれは宿泊客にも振る舞われた。それがとても好評だった。

「2人分でも、8人分でも手間は変わらないので」というのがルナの言い分だった。

この日々の小さな変化が、何か大きな変化になるのかもしれない。

「明日新しい朝ごはんつくりますね。」と、ルナは不思議な笑顔で言った。

何かが変わろうとしている。
その気配を感じながら、僕はまた新しい一日を迎えた。


身体に優しい玄米カンパーニュ

noteでとても美味しそうなカンパーニュがありました。とても美味しそうですがさすがにつくれないので、創作の中でつくることにした。

そのインスピレーションが今回の創作です。

この話は後半、最終話に続きます。

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AIを使えばクリエイターになれる。 AIを使って、クリエイティブができる、小説が書ける時代の文芸誌をつくっていきたい。noteで小説を書いたり、読んだりしながら、つくり手によるつくり手のための文芸誌「ヴォト(VUOTO)」の創刊を目指しています。

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