episode4:大学一年の春
合格した女子大学に入学して早1ヵ月。
私は少し焦っていた。
思った以上に必修科目が多く、そこから専門科目、自分が取りたい講義を受講すると、毎日みっちり勉強のスケジュールとなり、寮と大学の往復、夜は課題をこなして早く寝る…という勉強漬けな日々が続いていた。
(他の寮生の子たちは、サークル活動もバイトも始めたり、彼氏の家に泊まりに行っていたり…。みんなすごくアクティブなんだよなぁ‥
寮と学校の往復しかしてないし、自分も何か大学生らしい楽しいこと始めなきゃ‥!)
夜に人の少ない寮の一室で一人で過ごしていると、寂しくておかしくなりそうになるので、なるべく寮の子たちと一緒にロビーで過ごしたり、大学では友達と過ごすようになってきたが、まだサークルには入っていなかった。
そんなある日、寮にいるメンバーで夕食を食べている時のことだった。
「バンドサークルに入ったんだけど、ドラムの子が足りていなくて。誰かバンドしたい子いないかなあ?」
背が小さくて小柄なナオちゃん。彼女とは学部も違い、あまり二人で話したことはなかったが、こうして夕食時によく一緒になり、ちょくちょく話すようになった子だ。
「え〜!やってみたい!」
考えるよりも先に口が動いていた。自分でもびっくりした。
普段の自分なら、こんな風にいきなり決めたりしないのだけど。
実は、私は高校の時からRADWIMPSの大ファンで、今は辞めてしまった山口君のドラムを当時リスペクトしていた。
"一度で良いから、自分もドラムを叩いてみたい!"
そんな密かな夢も持っていた。
(まさかこんなタイミングで叶うかもしれないなんて‥!)
と、一瞬胸が高まった。
(でも、まるっきりドラム初心者な自分が果たして本当にバンドでドラムなど出来るのだろうか…)
と、次の瞬間に不安と"無謀"の二文字が頭に横切った。
「えっ?マジで?本当に?私もまだお試し期間で良いって言うから仮入部の形でさ。
明日、説明会があるから話だけでも聞いてみない?
それでもしやる気出てきたら、一緒にバンドやろうよ!」
ぱあっと目を輝かせて喜んでくれたナオちゃんの笑顔に、今更「やっぱりちょっと…」とはもう言い出せない雰囲気だった。
(ああ言っちゃったけど、まずは説明会に行ってみて、ナオちゃんの言うように、本当に自分に出来るのかどうか、話を聞いてから決めてみよう‥)
そんなことを思いながら、
「うん、分かった!後で詳しく教えて〜」
と、笑顔を返した。
内心、ドラムを叩けるかもしれないことにもワクワクしていた。
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