年齢に関する思い込み
30代はじめにカリフォルニア大学のIT系の研究室に客員研究員として1年間留学しました。同じ研究室には世界中から集まった優秀な学生がたくさんいて、研究面ではもちろん、交流の中で研究だけでなくいろいろな学びがありました。
#例えば 、同室のイタリア人の研究員の彼女が訪ねてきたとき、二人は全く、私にかまわず熱烈なキスをしていて、あてられてしまいました(笑)。
その中で一番、その後の私に大きな影響を与えたのは L さんとの出会いでした。L さんは同じ研究室の修士2年の女性で、研究室では女性が二人だったこともあり、親切にしてもらい、話す機会がよくありました。
最初は勝手に20代か30代はじめの同世代かと思っていたのですが、実際には40代ということでした。それも、以前は NY で舞台の照明スタッフとして、プロフェッショナルの仕事でキャリアを築いていたとのことです。私は「なぜ、そのキャリアを捨てて、40代で大学院生に?東海岸から西海岸に転居するのも大きなことでは?」とびっくりして質問しました。彼女からは「照明の仕事をしていて、徐々にコンピュータが入ってくる中で、コンピュータやシステムに興味を持っておもしろいと感じて大学院にはいることにした。」というとてもストレートな回答が返ってきました。
その頃の私は、入学した大学や学部でその後の人生はほぼ決まると思い込んでいました。数年社会人経験をして大学、大学院に入りなおす人がいるのも知っていましたが、それはすごく勇気のあることだと思っていました。それなのに、約20年のキャリアを捨てて全く新しい分野の大学院に入って新しいキャリアを始めるなんて。でも目の前に L さんという実例がいることで、それは可能なことなんだ、それができないなんて、思い込みだったんだと、心の中に深く入ってきました。
その後、だいぶたってから、2016年に「ライフシフト」が出版され、社会人がキャリアの途中で学び直し、新しいキャリアを始める考え方が推奨されているのを見て、私は L さんを思い出していました。
いまは、私も大学の学部がそのあとの全部のキャリアを決めるという思い込みは外すことができるようになり、2つ目のキャリアを始めています。
L さんとの出会いは大きな財産だなと改めて思い出します。