女湯の女たちは自由
私は月額制のジムに通っている
お風呂が広くサウナ・水風呂・電気風呂・外気浴スペースもあり、新しくて綺麗なのでお風呂だけを目的に毎日通ってる人も一定数いる
お風呂の住人は子育てを終えた世代が多く、
お風呂で新しい人間関係を築き上げているので更衣室に入ってから出るまで2-3時間滞在は当たり前だ
どうやら朝風呂→仕事→お風呂をルーティーンにしている猛者もいて、楽しいけれど肌が乾燥するのが悩みと仲間内で話しているのが聞こえたことがある
「今日はAさんはいないの?」
「Aさんはあーだこーだでしばらく来られないって言ってたよ」などなど
しばらく行けない時はその情報も共有されるし
「Bさんが来たら私は帰ったことと明日は◯時にくる予定って伝えておいて」などの伝言も成り立っている
20代の私はその輪には入れず外側から見ているだけだが、ジムが出来た1年半前と比べて最近の常連メンバーたちは家族構成とその健康状況、子供のこと、最近の悩み、美容のこだわり、お風呂ルーティーンなどなにもかも打ち明け終えて絆が深まったように見える
会話を聞いていると女子校時代を思い出す
お風呂の友情にも
いつもの仲良しグループ、一番仲良しの人がいない時に話す人、挨拶だけする人、ギクシャクしたグループ同士、常連だけどみんなに嫌われている人、複数のグループに所属している人などいろいろあるようで10代の頃と同じだなと懐かしく思う
お風呂の住人のマイお風呂道具も見ていて面白い
私も洗面道具は一式お気に入りのものを持ち込んでいるが、お風呂の猛者たちはドライヤー、サウナハット、サウナマットは当たり前でそれ以外にも
・歯ブラシ
・電動マッサージ機(濡れてもいいタイプらしい)
・水だしのお茶(飲料水はあるのに自分の水筒でお茶を作っていた)
・粉末プロテイン
・タオル生地のワンピース
・詰め替えていないボトル類一式
・お風呂用のビーサン
などなど様々な物を持ち込んでいる
月額1500円で借りられる鍵付きの個人ロッカーを利用しているのか毎回持ち帰っているのかいつか聞いてみたい
裸で知り合って毎日裸で喋り込む女たちは
社会で組み込まれた母、妻、会社員などの役割から一時的に解放されてどこまでも自由だ
裸の女だけの空間に女らしくという抑圧もルッキズムも存在しない
上下関係も金銭のやり取りも責任もなく
そこにあるのはヒトとヒトの人間関係だけ
ジムができてからの1年半ほどで常連メンバーのお風呂リズムも仲良しグループも固定されて関係は煮詰まってきている、学校にはクラス替えがあるがお風呂の住人にシャッフルはない
何歳になってもヒトは悪口が大好きらしく、
今日はいない誰々は話し声がうるさいとか、あのグループの人のプールの使い方が気に食わないとか、あの人とはいつもロッカーの位置を取り合っている、あのスタッフは好きではないなどヒソヒソ話も聞こえてくる
悪口で盛り上がっていてもサウナで10分経ったら先に外に出るとか、水風呂からすぐ隣の湯船に移動しつつ会話を続けたり、お風呂の住人たちはマイお風呂ルーティーンと人間関係を両立していてみんな器用だなと感心してしまう
お互いのお風呂ルーティーンを完璧に把握して尊重し合っているようで「今サウナ何回目?じゃあ私は3回終わったからあっちに行ってるね」などの会話もよく耳にする
益田ミリさんの『女湯のできごと』を初めて読んだ時はまだジムに通っていなかったので「へー面白いなー」と距離をとって読んでいたが、今では「わかる!!!あるある!!」とのめり込んで読めるようになった
他の女性作家さんのエッセイでも「たまに行く銭湯でお風呂の住人のこんなルールがあった」というエピソードを読んだことがあるし、銭湯でも温泉でも必ずそこのお風呂の住人であろう方々がいるのでお風呂とはそういうものなのだろうか
私が見つけたお風呂の住人たちのマイルールは
・シャンプーしない日はプールの帽子を被ったまま湯船に浸かる(蒸れない?と他の住人に突っ込まれていた)
・水風呂に最初は勢いよく頭まで浸かる
・サウナの中で腹筋する(後日張り紙で注意されていた)
・ドライヤーする時は必ず立ってやる
・ドライヤー中に読書をする
などなど女たちは自由に過ごしている
同じジムに通っている彼氏に男湯の様子を聞いたところ、全く違う文化らしい
①お風呂道具を持ち込んでいる人は少ない
備え付けのシャンプー、ボディソープ、ドライヤーがあるのでこれは想像通り
②喋っている人はほとんどいない
常連同士で挨拶もないのは意外だった
男湯に裸から始まる友情文化はないらしい
③電気風呂が不人気
女湯では定員2名の電気風呂は大人気で常にお風呂の住人の談笑の場になっていて、誰かが出る時に電気風呂が好きな他の住人に「次どうぞ」と声かけをしたりもしているけれど男湯では電気風呂はあまり興味を持たれないらしい
④常連でもタオルで前を隠す
女湯ではお風呂の住人だけでなくほとんどの人が堂々と裸で歩いているが、男湯では観光地の温泉と同じようにタオルが必要らしい
⑤お風呂の住人による清掃活動がない
住人たちは自分たちの空間を快適にすべく、溜まっている髪の毛をシャワーで排水溝に追いやったり、台を拭いたり、湯船に浮いている絆創膏を掬って捨てたり、時にはスタッフさんに「ここがぬめぬめだから清掃してほしい」と希望を伝えたり清潔さを自分たちで守っているが、男湯にその文化はないらしい(彼氏が気づいていないだけの可能性もあり)
お風呂の住人たちの会話の輪には入れないが、
住人たちは金髪で目立つ私を覚えていて、きっと私のマイルールも発見されている
年齢が上がればいつか仲間に入れると思うとおばさんになるのも楽しみになる
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