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ナツの大冒険[RPG風]-4-Aシステム〈海に落ちる月・第2部〉

◆第1部あらすじ
動画配信で起業を目指す神野(カンタ)とインフルエンサー倉田(クラゲ)
成功は目前と思われたが、倉田は両親の死にまつわる謎のために、神野の元を去ってしまう
意気消沈した神野を思う恋人ナツは、倉田を探しにゆく決意を固め、彼女のクエストが始まる


>Aシステム予約センターです
>ご新規の方は1を
>ご紹介の方は2を
>再予約の方は3を
>その他の方は4を押してください

Club Saluteでもらった電話番号にかけると合成音声が流れた
よくある自動応答システムだ
「Aシステム」が何か分からないが、これしか手がかりがないので仕方ない

(えーっと、いちおう紹介だから2かな)

>ご紹介の方は初回相談料が無料となります
>オンラインの方は1を
>ご来店の方は2を押してください

(相談料があるんだ…弁護士事務所とかかな
 最初は無料らしいから相談だけでもしてみようか)

会わなければ要領を得ないので2を押してみる

>ただいまご予約可能な時間を検索いたします

>明日15:30が最短です
>よろしければ1を
>その他の時間が…

ナツはすぐに1を押した

>明日15:30、銀座4丁目和光前でお待ちください
>当日は現在お使いの端末をお持ちください
>時間厳守でお願いします
>本日はご利用ありがとうございました

無機質な声はここで切れてしまった

(和光前? あんな人の多いところでどうやって待ち合わせるのかしら)

とにかく指定された時間に和光前に立ってみるが、誰も声をかけてこない
キョロキョロしながら待っていると、15:30ちょうどに電話がコールされた
出ようとしたがすぐ切れてしまった

(?)

すると1台のタクシーが目の前に停まり、運転手が下りて来た

「Aシステムさんですよね、お迎えにあがりました」

(なるほど、こういうことか
 なに? この回りくどさ!)

(何か隠したいことがある?
 え、ヤバい組織とか、秘密結社とか
 でも、このタクシーは普通の民間のだし…)

ナツの頭の中が疑問符でいっぱいになったころタクシーが停まった

「こちらまでとなります、料金はいただいてますんで」

そこは古い大きな家が立ち並ぶ、住宅街の坂の下だった
この先は一本道しかない

(どうせなら坂の上まで乗せてよ~)

しかし、タクシーは行ってしまったので、ナツは仕方なく歩き出した

坂の上には隠れ家のような洋館があって、道はその裏庭に続いている
庭は英国スタイルでテーブルが一つ置かれていた

そのテーブルに座ってスマホをいじっている人がいる
長い髪を後ろで束ね、白い上着を羽織っている華奢な肩は、男とも女とも分からない

その人が顔を上げてナツを見た

ナツは目を見張る

(え、AI?)

AI合成ではないかと思うほど整った顔の持ち主はにっこり笑った

ナツはまだ戸惑っている
顔を見た今でさえ男か女か分からない、ただただ美しいその人をぼーっと見つめていた

「ご予約のナツさんですね
 初めまして、Aシステムのアキラです」

テノールの声でやっと男と分かった
耳触りの良い、通る声が名乗った名前にナツは覚えがある

(アキラってあのVTuberで、高級ホストの?
 Aシステムってホストの予約システムなの?)


その数時間前、Aシステム事務所(?)では二人の男が話していた
一人は比類ない美しい顔をほころばせ、テンション高く楽しそうなアキラ、一人はうんざりした様子の津田だ

「いよいよ、彼女に会えるんだね、楽しみだな~、ね、津田ちゃん」

「Saluteあたりで普通に会えばいいじゃないですか、Aシステムなんて架空のシステムまで作って面倒な」

「やだよ、あのコは神野とかいうヤツの彼女でしょ、優しくするいわれはないね、楽しまなくちゃ」

「私は仕事がありますので失礼します、勝手にしてください」

部屋を出ようとする津田を押し留めるように、隣の部屋から青い顔をした青年が飛び込んできた

「津田さん、行かないでください、僕を置いてかないで、今日は僕一人なんです」

津田は頭を抱えた
ここの秘書は普段は二人体制のはずだが、欠員が出たらしい

「大丈夫ですよ、いくらこの人でも秘書をいきなり襲ったりしないですから」

「分かんないよ~」

アキラはへらへら笑ってからかうように言った

「やめなさい!
 分かりました、警備からこちらに一人まわすように手配します
 それまで私もここにいますから」

震えている秘書をなだめているとアキラは

「あのナツってコ、いい体してるよね、お尻触っちゃおうっかな」

とまた無神経な発言をしてきた

「アタマ、吹っ飛ばされますよ」

(いっそのこと、吹っ飛ばされて欲しい)

もはや警護と言うよりアキラのお守り役と化した津田は、この男と契約したことを心から後悔していた


▶ナツはアキラにであった
▶ナツはレベルがあがった

●Aシステム
ナツを呼び出す(からかう)ための架空の「ホスト予約システム」
事務所はアキラの会社の本社内と思われる
アキラの会社、とくに本社秘書課はセクハラパワハラ日常茶飯事のブラック企業だが給料は破格



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