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脳卒中者のバランス機能から歩行非対称性を探る
脳卒中者の歩行非対称性は、当然ながら様々な問題を引き起こします。
歩行の非対称性は転倒の発生要因の1つと考えられています。
そのため、歩行の非対称性をまずは知ることが転倒を予防するためには重要であると思われます!
結論から伝えると、バランス能力と歩行非対称性はやはり関係します!
では、歩行中のどの要素がバランス能力と関連するのでしょうか?
その辺を知っていると、転倒予防するために歩行のどの要素に着目した介入が必要かが明確になると思います。
今回は、上記に関連する論文の確認ができたため、内容をまとめています。
この記事で解決されやすいこと↓
・歩行の非対称性が著明にみられる方を担当している
・歩行非対称性とバランスの関係性を知りたい
・歩行非対称性を改善することを目標としている
上記のような悩みを抱えてる方は是非ご参照ください!
本日紹介する論文はこちら↓
このnoteについて
IF(Impact Factor):Journal of Applied Biomechanics, 1.617
本文文字数:4940文字(参考文献のリンクによる字数が含まれます)
参考文献数:12本
では、早速内容に入ります!
論文について
スライド資料によるまとめ
論文についてより詳細に知りたい方はこちらから↓
はじめに
転倒の原因は多くの要因が関わるが、脳卒中者においては特にバランスや姿勢制御が障害されていることが多く、転倒の最大の要因の1つとなっている(1)。
歩行の逸脱とバランスの障害はともに同様の障害と関連していることが多い。
例えば、片麻痺や感覚障害、筋緊張などがどちらにも影響している可能性がある。
脳卒中後の静的立位(2,3)および歩行(4,5)は共に顕著な非対称性が観察される。
静的立位姿勢では、非麻痺側の体重支持が麻痺側と比べて大きくなる。同時に、非麻痺側の遊脚相が短くなると、非麻痺側のステップの長さが短くなることは臨床上よく観察される(6)。
その結果、時空間的な歩行の非対称性(立脚・遊脚時間、歩幅の非対称性)が観察されバランス能力にも影響することが考えられている。
本研究の目的
1. 時空間的歩行の非対称性と静的および動的なバランス能力に関係性があるか調べること
方法
対象者:慢性期脳卒中者39名(年齢:56.7±10.5歳、発症後:54±60ヶ月)
対象基準:
1. 発症から6ヶ月以上経過した方
2. 補助具やセラピストの介助なしで自立歩行が可能な方
除外基準:
1. 小脳病変がある場合
2. パーキンソン病など歩行能力に影響を及ぼす神経疾患を併発している場合
3. 脳卒中前にバランス障害や原因不明の転倒既往歴がある方
4. 指示に従うことができない認知機能障害を有する方
評価と分析
歩行評価
・歩行はGAITRiteマット上を歩行し、評価を行った。
・各参加者は、快適歩行速度(CGS)と最大歩行速度(FGS)で3回実施した。
・GAITRiteにて、各ステップのステップ長、ステップ幅、立脚と遊脚時間を算出。麻痺側と非麻痺側の対称性を比率を出し、値が1.00であるほど対称性を示す。
・先行研究で、歩幅の非対称性が1.08、立脚時間の非対称性が1.05、遊脚時間の非対称性が1.06を超えると、健常者と比べ有意に異なると考えられている(4)。
バランス評価
・Berg Balance Scaleを用いて評価を実施。
・フォースプレート上に約1分間立位姿勢を保持
統計解析
・Pearsonの相関係数:CGSと時空間非対称性との関係性
・Pearsonの相関係数またはSpearman順位相関:BBSの値と歩行非対称比および歩行速度との関係性
結果
下記の画像から確認しましょう!
これは、バランス評価と時空間的歩行の非対称性を示しています。
まずは、用語の確認だけしておきます!
BBS:Berg Balance Scale
STA:立脚時間の非対称性
SwTA:遊脚時間の非対称性
%Par:静的立位時に麻痺側にかかる体重の割合
SW:歩行時の歩幅
SLA:歩幅の非対称性
これらの相関性をそれぞれで観察しています!
統計学的に有意差を認めたものはそれぞれ以下の通りです。
快適歩行
・BBSと遊脚時間の非対称性(負の相関)
・BBSと歩幅の非対称性(負の相関)
・歩幅と立脚時間および遊脚時間の非対称性(正の相関)
最大歩行
・BBSと遊脚時間の非対称性(負の相関)
・BBSと歩幅の非対称性(負の相関)
・静的立位時の麻痺側荷重量と歩行時立脚時間の非対称性(負の相関)
・歩幅と立脚時間および遊脚時間の非対称性(正の相関)
考察
結果から分かるように、歩行非対称性の比と動的バランス課題(BBS)の間には静的立位バランスよりも多くの有益な関係性が観察された。
転倒を最小限に抑えるためにはバランス機能が重要であり、転倒の多くが歩行中に起こることを考慮すると、時空間的な歩行の非対称性が脳卒中後の転倒量と関係している可能性がある。
BBSが立脚時間の非対称性ではなく、遊脚時間の非対称性と有意に相関していたことから、バランス低下の指標として遊脚時間の非対称性の方が重要であるかもしれない。
今回のデータでは、2つの歩行速度(快適・最大)で、バランス能力や時空間非対称性の関係性はほとんど変わらなかった。特に、歩幅は、CGSからFGSに移行しても変化しなかった。このことは、健常者では歩行速度が速くなると歩幅が小さくなるため、脳卒中者の変化として重要な知見である(7-9)。
より重要な知見として、
静的立位の荷重分布は、快適歩行において全ての時空間的測定とも相関関係になかった。
先行研究では、非麻痺側と比較し麻痺側でより広い歩幅となることで、歩行中の不均等な荷重分布と関連していた。
歩行の時空間的非対称性と静的立位の荷重分布の関係性を認めなかったのは、立位と歩行では必要とされる課題が異なるかもしれない。
この結果を裏付けるように、先行研究で静的立位の荷重配分を改善する練習では歩行の改善につながらないことが明らかとなっている(10,11)。
BBSには、静的および動的バランスの測定項目が含まれており、歩行は動的活動であることを考えると、動的課題を含むバランス測定が時空間歩行非対称性の比と関連し、静的立位のバランス測定が関連しないことは想定できることである。
歩行パラメータとバランス能力との間に有意な関係があることは先行研究でも報告されている。
高齢者の転倒経験がある群は、非転倒者とは異なる歩行戦略をとることが示されています(12)。
時空間的な歩行の非対称性とバランス障害との直接的な関係性はまだ明らかとなっていないが、これらの研究は本研究を支持する関節的な証拠となっている。
臨床応用
では、より理解を深めていきましょう!
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