Brown‐Séquard’s症候群の病態解釈
今回は、脊髄損傷の病型の1つ、ブラウンセカール症候群の病態理解について、【初学者向け】にまとめていきたいと思います!
ブラウンセカール症候群とは?
ブラウンセカール症候群は、脊髄損傷の病型の1つですが、神経回路の観点から病態理解が複雑になりやすい病型かと思います。
書籍でも、この病態をより詳しく簡単にまとめたものがほとんどないため、図解しながら解説していきます。
まず、脊髄レベルでこのブラウンセカール症候群を図解すると、下記のような病態になります。
上記の場合、右側の脊髄を半分損傷した状態で、半透明の部分が損傷を示しています。
脊髄レベルでは、このように多種多様な神経路が含まれるために、病態を複雑化していますが、難しく考える必要はほとんどありません。
では運動路から見ていきましょう!
ブラウンセカール症候群の運動障害
まずは運動路を改めて確認しておきましょう!
運動路は大きく分けて、”錐体路”と”錐体外路”がありましたね。
錐体路
・外側皮質脊髄路
・前皮質脊髄路
錐体外路
・赤核脊髄路
・網様体脊髄路
・前庭脊髄路
・視蓋脊髄路
度々登場するスライドですが、簡単にそれぞれの神経路の役割を確認しておきます。
では、ブラウンセカール症候群による運動障害はどのように出現するか結論から伝えると、
”損傷側と同側の運動麻痺”が出現します。
その理由を言語化できるでしょうか?
上記の神経路のうち、特に”運動”に関わる神経路は、外側皮質脊髄路になります。
その外側皮質脊髄路は、大脳から脊髄に至るまでに、脳幹の延髄で”錐体交叉”が行われています。
延髄交叉については、今回割愛しますが、
簡単に解釈すると、外側皮質脊髄路は、錐体交叉が行われた神経路であり脊髄レベルで交叉はなく、同側の脊髄を下降するため、運動麻痺は損傷側と同側に認められることになります。
ここで一応、脊髄損傷の後発部位を確認しておくと、
最も多いのが、頸髄6-7番目の損傷、ついで胸腰髄12-1番目の損傷が多いとされています。
つまり、頸髄レベルでブラウンセカール症候群を受傷した場合は片麻痺(上記の場合だと右片麻痺)、胸髄下部や腰髄レベルで損傷すると単麻痺(単肢の麻痺)と言われる障害を負うことになります。
脊髄損傷は、疫学的にも四肢麻痺が多く、一般的に四肢麻痺のイメージがあると思いますが、
このブラウンセカール症候群の場合は、四肢麻痺にはならず、障害の脊髄レベルに応じて片麻痺(頸髄損傷)もしくは単麻痺になるということになります。
そのため、
脊髄損傷 = 四肢麻痺
と理解しておくのは危険な解釈になります。
より詳しく解釈すると、
当然ながら受傷した脊髄レベルに応じて、運動障害は異なります。
上記では、頸髄損傷の場合、”片麻痺”とひとまとめにしましたが、脊髄損傷が生じたレベルが仮にC6レベル(第6頸髄)だとしましょう。
この場合、C6レベルが支配している筋群およびそれ以下の筋群には運動麻痺が生じることになります。
脊髄損傷の場合、
C6レベルで重要な筋群は、長短橈側手根伸筋や、その他、回内筋、橈側手根屈筋、そして動作レベルで非常に重要な上腕三頭筋が関与します。
当然、損傷レベル以下にあたるC7レベルの手指伸筋群やC8レベルの手指屈筋群と、ADL動作に重要な手指機能も運動麻痺が生じます。
いわゆる、損傷髄節レベルによって、生じる運動麻痺は異なります。
そのため、片麻痺と一言で言っても、脳卒中のように片側全ての神経が麻痺するような病態とは異なることになります。
上記の点は解釈に注意が必要です。
運動障害が起こる原因、そして生じる麻痺の型は整理できましたでしょうか?
では次はより複雑になる、感覚障害についてです。
ブラウンセカール症候群の感覚障害
ブラウンセカール症候群の感覚障害を理解する上で、
”それぞれの神経路がどのような感覚に関わるのか”
上記を知っておくことは必須です。
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